(承前)
PARASOPHIA 京都国際芸術祭のエントリが続いているが、まさか40組すべてについて論じるわけではない。
出品アーティストを単独で取り上げる記事はそろそろ終わりにして、話を先に進めるつもりである。
図録によると、アナ・トーフは1963年、ベルギーのモルツェル生まれ、ブリュッセルを拠点に活動。
マニフェスタ9などに参加している。
今回の出品作「ファミリー・プロット」は、カール・リンネやフンボルト、ワシントンら近世・近代の西欧人たち25人を取り上げている。
それぞれに、彼らの肖像よりも大きくあしらわれているのは、彼らの当時の世界地図だ。
これらの世界地図だけでも、大航海時代から帝国主義の時代に至る
「列強が世界を所有しようとする欲動」
を、十分に示しているといえようが、この作品群で特徴的なのは、もう1点ずつ、植物画の版画が、上方に添えられていることだ。
これを見ると、わたしたちが、いかにも南国・東方らしいと、漠然と思っていた植物が、西洋人によって採取、分類、命名されてきたということに、あらためて驚く。
たとえば、ナッツで有名なマカデミアは、ジョン・マカダム(1827~63)のところに付されているし、マグノリアは、ピエール・マグノール(1638~1715)に由来するものらしい。ブーガンビリアという花はブーガンビルという人物に関係するもののようだ。
この「世界を採集し、分類し、命名し、管理しようとする」西洋人の発想は、しかし、植物に限った話ではないだろう。
ミュージアム(博物館、美術館)というのは、まさにそのような思想の集約されたところだからだ。
だから、アナ・トーフの作品も、歴史や美術史を見直すという、この芸術祭のひとつの大きなテーマを表現しているといえると思う。
PARASOPHIA 京都国際芸術祭のエントリが続いているが、まさか40組すべてについて論じるわけではない。
出品アーティストを単独で取り上げる記事はそろそろ終わりにして、話を先に進めるつもりである。
図録によると、アナ・トーフは1963年、ベルギーのモルツェル生まれ、ブリュッセルを拠点に活動。
マニフェスタ9などに参加している。
今回の出品作「ファミリー・プロット」は、カール・リンネやフンボルト、ワシントンら近世・近代の西欧人たち25人を取り上げている。
それぞれに、彼らの肖像よりも大きくあしらわれているのは、彼らの当時の世界地図だ。
これらの世界地図だけでも、大航海時代から帝国主義の時代に至る
「列強が世界を所有しようとする欲動」
を、十分に示しているといえようが、この作品群で特徴的なのは、もう1点ずつ、植物画の版画が、上方に添えられていることだ。
これを見ると、わたしたちが、いかにも南国・東方らしいと、漠然と思っていた植物が、西洋人によって採取、分類、命名されてきたということに、あらためて驚く。
たとえば、ナッツで有名なマカデミアは、ジョン・マカダム(1827~63)のところに付されているし、マグノリアは、ピエール・マグノール(1638~1715)に由来するものらしい。ブーガンビリアという花はブーガンビルという人物に関係するもののようだ。
この「世界を採集し、分類し、命名し、管理しようとする」西洋人の発想は、しかし、植物に限った話ではないだろう。
ミュージアム(博物館、美術館)というのは、まさにそのような思想の集約されたところだからだ。
だから、アナ・トーフの作品も、歴史や美術史を見直すという、この芸術祭のひとつの大きなテーマを表現しているといえると思う。
(この項続く)