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京都へ(8) PARASOPHIA アナ・トーフ(Ana Torfs)

2015年05月25日 01時01分01秒 | 道外の国際芸術祭
(承前)

 PARASOPHIA 京都国際芸術祭のエントリが続いているが、まさか40組すべてについて論じるわけではない。
 出品アーティストを単独で取り上げる記事はそろそろ終わりにして、話を先に進めるつもりである。

 図録によると、アナ・トーフは1963年、ベルギーのモルツェル生まれ、ブリュッセルを拠点に活動。
 マニフェスタ9などに参加している。

 今回の出品作「ファミリー・プロット」は、カール・リンネやフンボルト、ワシントンら近世・近代の西欧人たち25人を取り上げている。
 それぞれに、彼らの肖像よりも大きくあしらわれているのは、彼らの当時の世界地図だ。



 これらの世界地図だけでも、大航海時代から帝国主義の時代に至る
「列強が世界を所有しようとする欲動」
を、十分に示しているといえようが、この作品群で特徴的なのは、もう1点ずつ、植物画の版画が、上方に添えられていることだ。

 これを見ると、わたしたちが、いかにも南国・東方らしいと、漠然と思っていた植物が、西洋人によって採取、分類、命名されてきたということに、あらためて驚く。
 たとえば、ナッツで有名なマカデミアは、ジョン・マカダム(1827~63)のところに付されているし、マグノリアは、ピエール・マグノール(1638~1715)に由来するものらしい。ブーガンビリアという花はブーガンビルという人物に関係するもののようだ。

 この「世界を採集し、分類し、命名し、管理しようとする」西洋人の発想は、しかし、植物に限った話ではないだろう。
 ミュージアム(博物館、美術館)というのは、まさにそのような思想の集約されたところだからだ。

 だから、アナ・トーフの作品も、歴史や美術史を見直すという、この芸術祭のひとつの大きなテーマを表現しているといえると思う。


(この項続く) 



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