今年も4月に、書の一分野である「墨象」の2団体が展覧会を開いている。
両団体は、開催時期がずれていたが、2011年ごろから札幌市民ギャラリーで同じ会期の開催となっている。
「読めない」という理由で書展会場に足を運ぶのに二の足を踏む人も多そうですが、墨象は、造形性だけで、つまり絵画のように鑑賞しても十分に楽しめる。
もちろん書家は、力任せに大きな筆を動かしているのではなく、漢字などの書の古典を踏まえているわけであるが、気合いの入った作品が多く、見て元気がもらえると思う。
冒頭画像は、樋口雅山房さん「無」。
これは今年1月5~18日、東京は新宿駅の東西を結ぶ通路にある「新宿プロムナード・ギャラリー」で「樋口雅山房の書 ひとふで展」で展示した作品。今回、表具をし直したとのことで、古い布をあしらったユニークなものになっている。
左右の余白をたっぷりあけて書かれた文字は、空間に柵を打ち込んだような気迫を漂わせる。華々しさよりも、粛然たるたたずまいだ。
ほかに「無」「空」。
「空」は表装の色が珍しいほか、印の位置も風変わり。
旭川の墨象をリードしてきた渋谷北象さんも、右の「無為自然」を見ると、パワーよりも枯淡の境地という印象を禁じ得ない。
左の「寒」2点も、うまいぐあいに力が抜けているように感じる。
手前は、やはり旭川の代表的な墨象書家の照井心磊さん「自」「恕」。
こちらも、しぶきを飛ばして力をアピールするのではなく、じっくりとした運筆。
にじみが面白い。
その左側はやはり旭川の太田秋源さん。
近づいて見ると…。
左から太田さんの「道」「知」「信」。
こうして見ると、旭川勢はなんとなく似ているかも。
70代とうかがったが、さっぱりと若々しい。
太田さんは他に「看」も出品。
右は小樽のベテラン木村重夫さん「猪突猛進」。
軸装なのにもかかわらず、横向きに書いているのがユニーク。
しかも、一般の扁額と同じく右から左に書いているのに、右下に印があるというのは珍しい。
札幌の吉田敏子さん「観自在」「常富」。
文字のせいか仏教的な境地を感じてしまう。
ほかの出品作は次の通り。
阿部尚美(札幌) 「安」
荒野洋子(後志管内倶知安町) 「妙」「風」
伊藤迪子(同管内余市町) 「包」「華」
工藤信子(倶知安) 「念」「福」
佐藤志珠(オホーツク管内遠軽町) (2点。機種依存文字)
塚本宏美(札幌) 「風」
村田幸子(倶知安) 「為」
作品サイズについていえば、札幌墨象会展の圧勝である(写真は撮っていません)。
三上禮子さん「雲山静趣」は4.95メートルもある。
寺嶋春代さん「TI・MI・MOU・RYOU」(180×480センチ)は、どうしてこういうタイトルにしたのか分からないが「魑魅魍魎」であろう。
東志青邨さん「妙心」は、1画目の入り方が絶妙。たれ落ちた墨が、紙に切り込むように入り込んでいる。余白のバランスも見事。
菊地紀仁さん「疆」(180×360)は、建築図面のように構築した文字が力強い。
佐々木信象さん「無盡蔵」(360×150)は、特殊な紙を使っているらしく、力強い墨の塊のところどころに、折れ目のような、墨が途切れているところがある。
島田青丘さん「濃」(180×180)は、この字なのに、淡墨を用いているのがおもしろい。
ほかの出品作は次の通り。
雨宮百合子「岬」
上戸抱山 「無影」「よどミなく」
菊地彰子 「海●」(●は「流」のさんずいのない字)
熊谷由加里「礎」
近藤敏子 「命」
斉藤靖子 「笙」
坂口末子 「互」
佐々木竹情「滅」
佐々木亨 「業」
佐藤恵美子「刻」
高谷義仁 「歳」
竹本克子 「授」
長嶋幸子 「戒」
林 維子 「雲海」
譜久元煌雪「無事」「逢」
牧 路涛 「冨嶽百景」
三上雅倫 「愚」
三上聡子 「風磨」
三上山骨 「雪」「ゆきあかりのみち」
三澤萠心 「縄A」「縄B」
森本暁子 「山水土」
横山純江 「逢」
物故会員 佐藤大朴「削」
同 須藤武夫「尋」
日時、会場は同じ
2019年4月3日(水)~7日(日)午前10時~午後5時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
※札幌墨象会は、6日午後2時から体験書作、7日午後1時からは公開批評会。
関連記事へのリンク
■第32回北海道墨人展■第69回札幌墨象会展 (2018)
■第31回 北海道墨人展■第68回 札幌墨象会展 (2017)
※以下、画像なしが多いです
■第30回 北海道墨人展■第67回 札幌墨象会展 (2016)
■第29回北海道墨人展■第66回札幌墨象会展 (2015)
■第56回札幌墨象会展 (2009)
■第53回札幌墨象会展(2007年)
■第52回札幌墨象会展
■第46回札幌墨象会展
■第45回札幌墨象会展
■第44回札幌墨象会展
■札幌墨象会展 (2002)
■札幌墨象会12人の書展
■第40回札幌墨象会展(01年春)
■第24回北海道墨人展 (2010)
■第23回北海道墨人展 (2009)
■第9回北の墨人選抜展(2008年9月)
■第21回北海道墨人展(2007年)
■第20回北海道墨人展
■第16回北海道墨人会(2002年4月8日の項)
樋口雅山房さん関連記事へのリンク
■500m美術館 vol.26「最初にロゴス(言葉)ありき」 (2018)
■樋口雅山房 吉祥文字展 元気HOKKAIDO (2011)※画像あり
イーアスの回転寿司店に樋口雅山房さんの書画
■墨人・樋口雅山房の世界(2003年)
□「北海道人」のインタビュー http://www.hokkaido-jin.jp/issue/int/003.html
吉田敏子さん関連記事へのリンク
■交錯する眼差しの方へ II(2013)
■交錯する眼差しの方へ (2008、テキスト未完)
・地下鉄東西線「バスセンター前駅」10番出入り口から約200メートル、徒歩3分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約520メートル、徒歩7分(札幌駅バスターミナル、時計台前などから現金のみ100円)
両団体は、開催時期がずれていたが、2011年ごろから札幌市民ギャラリーで同じ会期の開催となっている。
「読めない」という理由で書展会場に足を運ぶのに二の足を踏む人も多そうですが、墨象は、造形性だけで、つまり絵画のように鑑賞しても十分に楽しめる。
もちろん書家は、力任せに大きな筆を動かしているのではなく、漢字などの書の古典を踏まえているわけであるが、気合いの入った作品が多く、見て元気がもらえると思う。
冒頭画像は、樋口雅山房さん「無」。
これは今年1月5~18日、東京は新宿駅の東西を結ぶ通路にある「新宿プロムナード・ギャラリー」で「樋口雅山房の書 ひとふで展」で展示した作品。今回、表具をし直したとのことで、古い布をあしらったユニークなものになっている。
左右の余白をたっぷりあけて書かれた文字は、空間に柵を打ち込んだような気迫を漂わせる。華々しさよりも、粛然たるたたずまいだ。
ほかに「無」「空」。
「空」は表装の色が珍しいほか、印の位置も風変わり。
旭川の墨象をリードしてきた渋谷北象さんも、右の「無為自然」を見ると、パワーよりも枯淡の境地という印象を禁じ得ない。
左の「寒」2点も、うまいぐあいに力が抜けているように感じる。
手前は、やはり旭川の代表的な墨象書家の照井心磊さん「自」「恕」。
こちらも、しぶきを飛ばして力をアピールするのではなく、じっくりとした運筆。
にじみが面白い。
その左側はやはり旭川の太田秋源さん。
近づいて見ると…。
左から太田さんの「道」「知」「信」。
こうして見ると、旭川勢はなんとなく似ているかも。
70代とうかがったが、さっぱりと若々しい。
太田さんは他に「看」も出品。
右は小樽のベテラン木村重夫さん「猪突猛進」。
軸装なのにもかかわらず、横向きに書いているのがユニーク。
しかも、一般の扁額と同じく右から左に書いているのに、右下に印があるというのは珍しい。
札幌の吉田敏子さん「観自在」「常富」。
文字のせいか仏教的な境地を感じてしまう。
ほかの出品作は次の通り。
阿部尚美(札幌) 「安」
荒野洋子(後志管内倶知安町) 「妙」「風」
伊藤迪子(同管内余市町) 「包」「華」
工藤信子(倶知安) 「念」「福」
佐藤志珠(オホーツク管内遠軽町) (2点。機種依存文字)
塚本宏美(札幌) 「風」
村田幸子(倶知安) 「為」
作品サイズについていえば、札幌墨象会展の圧勝である(写真は撮っていません)。
三上禮子さん「雲山静趣」は4.95メートルもある。
寺嶋春代さん「TI・MI・MOU・RYOU」(180×480センチ)は、どうしてこういうタイトルにしたのか分からないが「魑魅魍魎」であろう。
東志青邨さん「妙心」は、1画目の入り方が絶妙。たれ落ちた墨が、紙に切り込むように入り込んでいる。余白のバランスも見事。
菊地紀仁さん「疆」(180×360)は、建築図面のように構築した文字が力強い。
佐々木信象さん「無盡蔵」(360×150)は、特殊な紙を使っているらしく、力強い墨の塊のところどころに、折れ目のような、墨が途切れているところがある。
島田青丘さん「濃」(180×180)は、この字なのに、淡墨を用いているのがおもしろい。
ほかの出品作は次の通り。
雨宮百合子「岬」
上戸抱山 「無影」「よどミなく」
菊地彰子 「海●」(●は「流」のさんずいのない字)
熊谷由加里「礎」
近藤敏子 「命」
斉藤靖子 「笙」
坂口末子 「互」
佐々木竹情「滅」
佐々木亨 「業」
佐藤恵美子「刻」
高谷義仁 「歳」
竹本克子 「授」
長嶋幸子 「戒」
林 維子 「雲海」
譜久元煌雪「無事」「逢」
牧 路涛 「冨嶽百景」
三上雅倫 「愚」
三上聡子 「風磨」
三上山骨 「雪」「ゆきあかりのみち」
三澤萠心 「縄A」「縄B」
森本暁子 「山水土」
横山純江 「逢」
物故会員 佐藤大朴「削」
同 須藤武夫「尋」
日時、会場は同じ
2019年4月3日(水)~7日(日)午前10時~午後5時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
※札幌墨象会は、6日午後2時から体験書作、7日午後1時からは公開批評会。
関連記事へのリンク
■第32回北海道墨人展■第69回札幌墨象会展 (2018)
■第31回 北海道墨人展■第68回 札幌墨象会展 (2017)
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■第29回北海道墨人展■第66回札幌墨象会展 (2015)
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■第52回札幌墨象会展
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■第40回札幌墨象会展(01年春)
■第24回北海道墨人展 (2010)
■第23回北海道墨人展 (2009)
■第9回北の墨人選抜展(2008年9月)
■第21回北海道墨人展(2007年)
■第20回北海道墨人展
■第16回北海道墨人会(2002年4月8日の項)
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■500m美術館 vol.26「最初にロゴス(言葉)ありき」 (2018)
■樋口雅山房 吉祥文字展 元気HOKKAIDO (2011)※画像あり
イーアスの回転寿司店に樋口雅山房さんの書画
■墨人・樋口雅山房の世界(2003年)
□「北海道人」のインタビュー http://www.hokkaido-jin.jp/issue/int/003.html
吉田敏子さん関連記事へのリンク
■交錯する眼差しの方へ II(2013)
■交錯する眼差しの方へ (2008、テキスト未完)
・地下鉄東西線「バスセンター前駅」10番出入り口から約200メートル、徒歩3分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約520メートル、徒歩7分(札幌駅バスターミナル、時計台前などから現金のみ100円)