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■酒井広司展「北海道の旅」 (2016年9月28日~10月9日、札幌)

2016年10月09日 13時09分13秒 | 展覧会の紹介-写真
(追記あり)

 精力的な撮影、発表を続けている札幌の酒井広司さんには、北海道を被写体としたシリーズが三つある。
 モノクロフィルムを正方形にプリントし撮影地の緯度や経度を付した「偶景 / Sight Seeing 」シリーズの印象が筆者には強いが、昨年ギャラリー創で発表したモノクロのシリーズ「そこに立つもの」もある。
 そして、コダクロームというカラーフィルムを用い、1990年代から道内を撮影しているのが「北海道の旅」という今回の一連の作品。一部は、過去に500m美術館などで発表しており、その際は複数のプリントをつなげて巨大な作品にしていた。今回も大きいが、これはプリントペーパーのロールにプリントした、いちばん大きなサイズとのこと。

 ちなみに、インクジェットなどではなく、ラムダプリントという、デジタル以前の時代からある技法を用いているため、色合いは自然。粒状性は残るが、35ミリフィルムの再現性って中判カメラ用フィルムと比べてもいい線いってるな~と感じるほどだ。

 8点をこの大きさにプリントし、カフェコーナーの一角に41点をサービス判程度にプリントした。

 いつものとおり、それぞれにキャプションは伏せられていない。
 したがって、撮影地は、あれが羊蹄山だなとか、流氷が押し寄せてきているからオホーツク海だな、といった想像はつくが、ほとんどはわからない。
 小さいプリントのほうは、札幌・大通公園などのスナップもあるが、総じて、「旅」という題がついているとはいっても、他の2シリーズと同様、いやそれ以上にアノニマス(無名)な風景を指向しているといってさしつかえなさそうだ。観光ガイドにはまちがっても掲載されそうにない写真ばかりなのだ。

 また、人の姿がしばしば入っているのも、他の2シリーズにはあまりみられない特徴で、海岸線をとらえた1枚には、釣り人が1人とらえられているし、川の下流部を撮った1枚には岸辺にたたずむ人が写っている。羊蹄山を望む1枚も、手前の残雪の上に立っている人がいる。
 いずれも黒くつぶれていて、表情や服装は判然としない。

 無名の風景とはいえ、そこに記録されているひとつひとつのものに、やはり北海道らしさがにじみ出ていると筆者には感じられる。
 雪や植生はもちろんだが、低い太陽光線、広い道路と乏しい交通量、家の隣にたつ灯油タンクなどがそうだ。
 森山大道が撮った大都会、ホンマタカシの郊外などとは違う、広漠とした北海道の特色がそこには漂っている。

 会場入り口に掲げられた作品は釧路管内白糠町の山間で撮った木造の家と庭。
 この風景は、道東道の建設のため、すでにないという。
「風景は変わっても写真は残る。ここにある写真を100年後の人が見たら、どう思うかな」
と酒井さんは淡々と話していた。


(しかし、こうして振り返ってみると、酒井さんの写真展を見に行って、ブログの記事を書かないまま放置していることが、筆者には多いようですね。酒井さん、すみません)


追記。このシリーズはすべて横位置で撮られている。


2016年9月28日(水)~10月9日(日)午前10時~午後6時、月火曜休み
茶廊法邑(札幌市東区本町1の1)

・オープニングパーティーとギャラリートーク 9月28日(水)午後6時半


□GRAYTONE PHOTOGRAPHS http://www.graytone.jp/



2014年の写真展のようす(新さっぽろギャラリー)


その他、過去の記事
表出する写真、北海道 (2014、画像なし)
【告知】酒井広司写真展 (2012)

さっぽろフォトステージPart2 (2009年)
酒井広司写真展「Sight Seeing」(2009年)
酒井広司「印画紙としての写真」展(2009年3月)

札幌の美術2004
北海道・現代写真家たちの眼2001「青」





茶廊法邑への道(環状通東駅から)


・地下鉄東豊線の環状通東駅から約790メートル、徒歩9分

・札幌駅北口か環状通東駅から、中央バス「東64 伏古北口線」「東65 伏古・北13条線」(いずれも東営業所行き)に乗り、「本町1条2丁目」降車。約180メートル、徒歩3分(いずれもおおむね1時間おき)

・中央バス札幌ターミナルから中央バス「26 丘珠空港線」に乗り、「北13条東15丁目」降車。約460メートル、徒歩6分。本数は少なめ。なおこの路線は、環状通東、元町、新道東、栄町の東豊線各駅とも連絡

・地下鉄南北線「北18条駅」から中央バス「東62 本町線」に乗り「本町2条1丁目」から約450メートル、徒歩6分


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