北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

2017年3月24日は5カ所

2017年03月25日 01時01分01秒 | つれづれ日録
(承前 一部の表現を手直し)

 雪がひどい。

 バスを「中島公園入口」で降りて、道立文学館へ。
 26日で終了する『手仕事の日本』と民藝の思想を見た。
 展示は大きく3部に分かれており、いちばん面積をとっている第1部は、柳宗悦の代表作『手仕事の日本』に登場する工芸品の中からいくつか実物を紹介している。
 第2部で、柳の盟友である棟方志功や芹沢銈介(銈はかねへんに圭)が装丁した本を陳列し、第3部で、民藝という概念を創始した柳の思想を概説する―という流れになっている。

 まあ「民藝」ということばは、人口に膾炙かいしゃしすぎて、本来の意味が伝わっていないきらいもあるので、あらためて学ぶには良い機会だと思う。

 できれば『手仕事の日本』を事前に読んでいれば話が早いが、もちろん読んでいない人でもそれなりに楽しめる。
 ただ、民藝品とは、鑑賞するものではなく、使ってナンボのものであるから、茶碗にしろ和紙にしろみのにしろ、触ることができないのは、ちょっとストレスである。

 ところで『手仕事の日本』という本は、1943年に原稿が完成し、48年に出版された。
 柳が初めて北海道を訪れたのは戦後のことなので、あれほど日本国中や朝鮮を旅していた柳の本だというのに、北海道は完全素通りである。沖縄も詳しく述べられているのに。
 その欠落を補うという意味もあるのだろう、常設展示の一角で北の手仕事あれこれという企画も行われている。アイヌ民具や、更科源蔵、木内綾、川上澄生といった人々の仕事が簡単に紹介されている。
 こちらも26日まで。
 いずれも有料で、撮影不可。

 ロビーでは、図録(400円)や、会場で紹介されていた和紙で作られた便箋などが販売され、10巻本の柳宗悦選集もあった。そもそも、筑摩から全集が出た現在、選集の在庫がまだあり、流通しているということ自体、ちょっと驚いた。
 さらに「民藝」というリトルマガジンのバックナンバーが300円でたくさん売られていたが、この冊子は表紙に特集の中身などをまったく記さないため、めくって目次を確認しないと内容がわからない。一冊一冊調べるのも面倒である。

 民藝とアートについては、いろいろ考えていることがあるので、ぜひ別項で書きたい。


 中島公園駅から地下鉄南北線でさっぽろへ。

 日生ビルのキヤノンギャラリーで、アサヒカメラ:2016年アサヒカメラ賞受賞作品展(~28日)。

 カラープリントの部7点、モノクロプリントの部9点、組写真の部7点、ファーストステップの部7点。
 そのうち組写真の部に、名寄の向井和栄さんの「青春時代」と「去り日 慕う」がいずれも3位に選ばれている。
 後者は、ピアノを弾く手、アコースティックギターをつまびく老人、グラスを傾ける女性客の3枚で構成され、モノクロフィルムの粒状性もあいまって、昭和期のライブハウスの濃厚な雰囲気をこちらも味わっているような、そんな気分にさせられる作品。

 ファーストステップの部には、旭川の丹野律子さん「静かな夜」が選ばれていた。
 「青い池」と夏の銀河をとらえたカラー作品。


 駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)にもぐり、「一文字展」を見ながら歩いていたら、偶然、後志地方の学芸員諸氏に遭遇。
 このあたりの話は、すでに「札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)で有島武郎・木田金次郎パネル展」の記事に書いた。

 大五ビルに足を向け、ギャラリー大通美術館で「千展」を見る。
水野スミ子さんの率いる、毎春恒例の絵画グループ展。
 すごいエネルギーだが、これでも全盛期から比べればおとなしいほうだろう。

 筆者が若者のグループ展に対してかなり冷淡なのはなぜだろうと思っている読者の方がおられたら、ぜひ「千展」を見てもらいたい。札幌の若者のグループ展のパワーはいずれも、この「千展」の半分にも達していない。おばさん(失礼)5人のパワーに完全に負けているのである。
 26日まで。

 3階の北海道文化財団アートスペースへ。
 展示期間が1カ月ほど延びた国松希根太展へ。27日まで(ただし、土日休み)。
 平面4点だけ、題も無いが、北海道の自然を、表層的ではなく、その精神性を秘めた奥深いところで写生する作家の手際の見事さには、驚かされた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。