こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

思わずひと言

2015年04月02日 19時11分51秒 | 日記
娘の大学の入学式。学舎の周囲に満開の桜。鮮やかさは、気分もかなり影響するんでしょうね。何回も見惚れてしまう、目を瞠る美しさでした。娘の明日を祝ってくれてたんでしょうね。ありがとう、桜さん。
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コラム・老化現象

2015年04月02日 17時39分25秒 | 文芸
「もう!なんて恰好してるの。何でも着ればいいわけじゃないでしょ。体裁ってものがあるのよ。買い物で一緒に歩けないわ」
 久しぶりに妻と買い物へ一緒に行こうと誘われたのに、もう言いたい放題である。
 確かにあるものを手当たり次第に重ね着したが、寒い思いはこりごりって理由だけ。
「これ見てごらんなさい。」
 妻が出して来たのは古いアルバムである。開いてみると、えらくスマートな男女の写真が貼ってある。結婚した当時の私と妻の写真である。しまった体つきはともかく、着こなしもすっきりと整っている。我ながらほれぼれする男ぶりではないか。思わずニヤリ。
「わかった?私の結婚相手はこんなに素敵だったのよ。それが……あ~あ~」
 妻のこれみよがしな悲嘆ぶり。でも、どうしようもない。自分のポッコリおなかを見る。
「これじゃー、いくらおしゃれしてもなあ」昔は簡単に諦めはしなかったけど……。
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思わずでた兄弟愛

2015年04月02日 10時27分51秒 | 文芸
思わず出た兄弟愛

仲がいい証拠の兄弟げんかというが、私と兄も子どもの頃よくけんかした。
 二人兄弟でそれも年子だから、まあ派手ににけんかした。しかし似たもの兄弟でともに内弁慶。表ではめったに誰ともけんかをしなかった。
 そんな私が、一度だけ外で、ひと前で大ゲンカをしたことがある。兄をいじめるガキ大将に悔しさいっぱい、無我夢中で突っかかっていったのだ。
 体格が倍以上も違う上級生にかなうはずはなかったが、そんなことは考えもしなかった。
 殴られて泣きながらも、相手の足にかみついて離さなかったのを、きのうのことのように覚えている。
 兄と二人取り残されて鼻血をすすっていると、「アホやのう、お前」としんみりいう兄に、腹を立て、「アホちゃうわい!」とわたし。揚句がまたまた兄弟げんかが始まった。
 大人になってから、「あの時、うれしかったんやぞ」と兄に打ち明けられ、なんとも照れ臭かったものだ。
 その兄も二十四年前になくなっている。もう兄弟けんかはしたくても出来なくなってから久しい。寂しいなあ。
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小説・ぼくらの挑戦ーそれは(その10)

2015年04月02日 00時04分59秒 | 文芸
八月末、全国青年大会の兵庫県地区大会は姫路の文化スポーツの各施設で行われた。スポーツと文化両部門の県代表を選ぶ大会だった。誠悟のらの演劇部門は、文化センター横にある中央体育館に仮設舞台が設けられた。県下全域から十三地域の連合青年団が参加して競った。
「優勝したろとか、上手いことやったろとか、余計なこと一切考えるな。頭の中を白紙にして臨んだらええ。君らは今日まで試行錯誤を重ねながら切磋琢磨して来とるんや。その分、間違いのう成長を遂げ取る。自分を、仲間を信じるんや。うん。ボクは、ここまで来たら何も言うことあらへん。稽古で得たもんを気楽に思い切り出したらええ。舞台の幕が上がったら、もう演出家の出番はない。君らの独壇場や。ただ、大村真治くんに代わって君らが挑戦するんやってこと、絶対忘れんようにな」
 中川先生はヒョイと手を突き出した。それに倣って有子がすかさず手を差し出して重ねた。誠悟も、K市連合青年団員も、『絆』のメンバーも、そして奈津実が率いる高校生たちも手を出した。裏方の舞台監督を務める、あの佐竹の手が最後に重なった。
「ぼくらの挑戦は始まったばかりや。目標はひとつ。大村真治くんと末森有子ちゃんの思いを、東京の舞台に持っていくことや。みんなは仲間や。栄冠をつかむまで、みんな一緒や!」
「オゥーッ!」
 胸に響く素晴らしいエールだった。輝く笑顔にあふれた若者たちを、中川先生は満足げに見やった。これで彼らは間違いなく、舞台を通じて差別の恐怖と醜さを訴えられる。若者の純粋な正義感が観客の心を揺り動かすだろう。そう確信した。
 早い順番で誠悟らの芝居は舞台にのせられた。幕が上がり、聡明が投じられ、役者たちが舞台に駆け上がった。さあスタートだ!
 ぶたいに上がった彼らは自分が受け持った役柄を、稽古通り確実にこなすことに専念した。舞台の裾や、ミキサー室から仲間の目が見守る。呼吸はピッタリとあった。芝居は感動を生みながら佳境に達した。そして、緞帳幕がスルスルと下りた。彼が豚気に繰り広げた人間ドラマは、観客の目を心をひきつけたままだった。しわぶきひとつない静寂が続く。
一瞬間をおいて、拍手が生まれた。大波に達した万雷の拍手は会場を埋め尽くした。誠悟らの若さを燃焼し尽した芝居『壁よ!』は、大喝采する観客が受けた感動を胸深く刻みつけていた。ぼくらの挑戦の第一歩は終わった。
「テーマも若者の視点で、よく熟し切れていました。差別がどんなものなのかを知ってほしい、それを許してはいけないという若者たちの純粋無垢な叫び。心を打ちました。観客の皆さんの心にひしひしと伝わったと思います。皆さんにありがとうと言わせて下さい。」
 講評に入った審査委員長は鼻を詰まらせながら言葉を続けた。
「役を演じる青年たちのひとりひとりが、正に役を通して命の躍動を見せてくれました。素晴らしい限りです。聞けば、このお芝居のストーリーは今回芝居作りに携わった皆さんのお仲間が実際に体験した実話だとか。身近な友人が受けた理不尽極まる差別は、きっと許せないものでしよう。それだけに舞台での彼らの叫びは本物になりました。オホン。私たちが味わい得られた感動は、大きく素晴らしいのひと言に尽きます。こんな感動を与えてくれた青年諸君に、もう一度、感謝の言葉を送らせて下さい。ありがとう!東京でもあなた方の感動を伝えて下さい」」
 審査委員長の絶賛に、会場は「そうだ!そうだ!」と共鳴の喝采と拍手が渦巻いた。
(ついに、ついにぼくらの芝居は、全国大会への切符を掴んだ。全国大会に行けるぞ。東京でぼくらは『壁よ!』を演じるんや!)
 誠悟は滅多矢鱈に嬉しかった。踊り出したい衝動を抑えるのに必死になった。
 楽屋に中川先生は待機していた。顔はくしゃくしゃだった。ボロボロ涙をこぼしながら入ってくる青年たちの手を固く握って迎え入れた。涙もろく感激屋の先生、本領発揮だった。
「ようやった、ようやったなあ!君らは、やはり素晴らしい若者や!」
「先生!」
 こみ上げて来る感動に翻弄されながらも、誠悟は中川先生の手をしっかりと握り締めて泣いた。自然と先生に感謝の頭を下げた。涙で目の前がかすんだ。

 誠悟が勤めるG書店は酷手の加古川駅前にあった。地区大会の翌日である。興奮の余韻を引き摺りながら、誠悟は早番で出勤した。
「おはようさん」
 既に出勤していた崔さんが、ニッコリと迎えてくれた。
(つづく)
(平成6年度のじぎく文芸賞受賞作品)

 


 
 
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