ガードマンお父さんはゆく!
「ただいまー!」
小学一年生の末娘が、元気いっぱいにご帰還だ。他の家族は留守でも、必ず夜勤明けのお父さんが待っていてくれるのを判っている。
といっても父親と遊ぼうというわけではない。もうずいぶん遊んできている。
学校から帰ったら、急いでおやつに、宿題を手早く済ませると、居ても立ってもいられないといった落ち着きのなさで、さっそく父親にお伺いを立てる。
「お父さん、遊びに行っていい?」
「どこで?」
「リエちゃんとこ」
「わかった。危ないとこ行くんじゃないぞ」
「うん!」
父親の許可を得ると、もう父親に用はない。バタバタと表に飛び出して行く。
夕方五時近くまで、とことん遊び回る。わずかな残り時間も惜しんで、ぎりぎりまで精いっぱい友だちと遊ぶ。少し遠い友達の家には自転車をガチャガチャこいでひとっとびだ。もう呆れるやら感心するやら、わたしの胸中は複雑だ。
「あんまり遠くへ行ったら、お父さん、心配やで」
「いいの。お父さんは、晩のお仕事のために、ちゃんと寝てたらいいの」
いっぱしのませた口をきく。小学校入学当初を想うと信じられない成長ぶりだ。
この間、心配になって、そーっと後をつけて行ったら、すぐ見つかってお叱りを受けた。
「わたしはいいの。寝ないと、お仕事ちゃんと出来ないでしょ!」
それでも、家で寝ていないといけない父親の姿を発見して嬉しいのだ。みるみる顔中に喜びが満ち溢れる。
その顔を見ると、もう幸せ気分でいっぱいになる。明日も明後日も、娘に内緒のガードマンお父さんに変身は、間違いなく実現するだろう。
(平成16年2月)