不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・さくらのおもてなし

2015年04月04日 12時45分18秒 | 文芸
桜のおもてなし
チラチラ
さあ
そろそろ
お別れです。

来年の春
また
お会いしましょう

もう少し
パーッと
咲いてます

楽しんでください
こころゆくまで

ひとの
あすはちょっと
はかり知れないものですから
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コラム・成人式の思い出

2015年04月04日 04時22分32秒 | 文芸
 四十五年前の成人式に、わたしは出席できなかった。当時、田舎の家を離れ、隣町で住み込みの仕事をしていた。
 成人式の招待状は実家に届いていたが、誰も知らせてはくれなかった。今とは違い、さほど成人式には関心を払わない時代だった。
 ところが、職場の専務は違った。従業員のひとりに過ぎないわたしのことをちゃんと覚えていてくれた。
「君は確か、今年が成人式だったよな。今日がそうじゃなかったけ」
「はい」
 別に深く考えもせず返事をした。
「それで…なんで仕事をしているの?」
 突然な上司の問い掛けに口ごもったわたし。すると、専務の口調が変わった。
「いいか。成人式は、一生のうちたった一度だけ、公けに祝って貰える大切な日なんだぞ。仕事に替えられない人生の区切りの記念日を放棄するなんて。まだ間に合うだろう。すぐ帰って出席して来なさい。大人の自覚を手に入れる貴重な日を無駄にするんじゃない」
 慌てて実家に戻ったが、結局式には間に合わなかった。
 しかし、夕食時に、久しぶりに顔を合わせた家族に成人の日を祝って貰うことが出来た。あの賑やかな喜びに満ちた食卓を思いだすたびに、専務の思いやりに感謝している。
(サンケイ・二〇一四年一月十日掲載)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小説・ぼくらの挑戦ーそれは(その12)

2015年04月04日 01時10分18秒 | 文芸
 しかし、誠悟は彼らの本音を知っている。
「あのチョーセン、生意気な女やで……」
 営業の須藤は、京子の姿が見えない時、誠悟を捉まえて、よく陰口を叩いた。そんな須藤に媚びでもするようににやりと反応した。そんな自分が内心たまらなくイヤになる。店主やほかの連中と、須藤らの差別的な陰口を注意できなくて調子を合わせてしまう誠悟も同じ穴の貉ではないか。
 そんな自己嫌悪に陥る誠悟を京子は知らない。いや、もしかしたら知っていて知らないふりを装っているのかも。彼女は頭がよくて、感も鋭い。
 暗い表情で考え事をし始めた誠悟に気付いた京子は、声の調子を不意に変えた。
「でも、江藤君は違うやん。それよう分かってる。他の人に合わせるの大変だもんね」
 京子はハタキを手に取ると、パタパタとはたいた。その眼は遠くに向けられていた。
「なあ江藤くん。東京の舞台に上がったら、差別ってこんなに怖い事なんやで。誰でも知らず知らずに人を傷つけたりしてるんやでってこと、みんなに伝えたってや。気張ってお芝居してや。ほんまのこと言うたら、江藤くんらの舞台、よう出来とる。でも、それを簡単に認めてしもうたら……」
 京子が前向きに生きる原動力となっている、差別への反抗心が崩れてしまうのが怖いのだ。
「とにかく、頑張り屋。ええ加減な手抜きしよったら、もう承知せえへんからな」
 言葉尻は茶化して、京子は明るく笑った。少々無理のある笑いだった。それでも、京子の魅力は変わらない。矢鱈に眩しい。誠悟の胸はひそかに痛んだ。

 十一月に入ってすぐ、全国青年大会は東京で開催された。
 職場で特別に休暇を貰った誠悟らは、兵庫県の代表として、些か気負い気味に緊張を覚えながら、新幹線で一路東京へ向かった。新幹線で隣り合わせに座った有子の元気のなさが気になった。誠悟はさりげなく話し掛けた。
「どないしたんや?有ちゃんらしいないで。どっか身体の具合が悪いんか?」
「ううん。そんなことあらへん」
「ほなどないしたんや。気になるがな」
 有子は目を逸らした。それでも重い口を開いた。
「お父ちゃんの事気になって。蚊が得れば考えるほど、お父ちゃん、可愛そうになって来たん点々……」
 誠悟は有子が暮らすの交流会で、有子の父親が乗り込んで荒れた一件を咄嗟に思い出した。あの時、酒の勢いを借りたやりたい放題のふるまいに、誠悟は心底震えたのである。
(つづく)
(平成6年度のじぎく文芸賞受賞作品)


 
 


 
 



 
 


 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする