マクドナルドがどうにも大変な状況です。130億円の赤字。131店舗の撤退……もう先行きどうなっちゃうのか心配です。というのも親戚がマックのスタッフ。勤める店が営業停止になれば路頭に迷うと、頭を抱えています。マックの異物混入問題があっても、なんとかマックをりようしてきたのも、彼が勤めていたから。彼が首になれば、もうマックとは永遠におさらばです。
『食べる』
どうも
空腹を
感じない
それが
年齢?
ズーッと前だ
いくら
食っても
食欲は
湯水のごとく
湧いてでた
それが若さ?
ひとり
寂しく囲む
食卓で
ためいきを
食べている
どうも
空腹を
感じない
それが
年齢?
ズーッと前だ
いくら
食っても
食欲は
湯水のごとく
湧いてでた
それが若さ?
ひとり
寂しく囲む
食卓で
ためいきを
食べている
高校は新設の工業高校。自由な環境で、既存の部に入る気になれず、級友三人と組んで同好会を発足した。『ストーリー漫画同好会』と当時ではまだ珍しかった。
それでも真面目に放課後、漫画を描いては批評し合った。結構真面目な活動だった。新聞部からの依頼で四コマ漫画も描いた。ただ漫画にこだわったせいか参加希望者は皆無。創設メンバーも、ひとりは転校し、私も生徒会活動に入り、常時同好会活動ができるのはたった一人になってしまった。
「美術部にせえへんか?」
見かねた顧問の先生が慌てて提案した。
「美術やったら部に昇格もあるし、部員かてひくてあまたや」
先生が美術部になった後のバラ色未来図を描くと、すぐそれにのせられた。当時は高校生も素直だったのである。
そして部に昇格した。しかしバラ色とは程遠く、すぐイバラの垣根に阻まれてしまった。
それでも真面目に放課後、漫画を描いては批評し合った。結構真面目な活動だった。新聞部からの依頼で四コマ漫画も描いた。ただ漫画にこだわったせいか参加希望者は皆無。創設メンバーも、ひとりは転校し、私も生徒会活動に入り、常時同好会活動ができるのはたった一人になってしまった。
「美術部にせえへんか?」
見かねた顧問の先生が慌てて提案した。
「美術やったら部に昇格もあるし、部員かてひくてあまたや」
先生が美術部になった後のバラ色未来図を描くと、すぐそれにのせられた。当時は高校生も素直だったのである。
そして部に昇格した。しかしバラ色とは程遠く、すぐイバラの垣根に阻まれてしまった。
甲斐性なしの結婚模様
「十日間の休暇でヨーロッパに新婚旅行だって。いいなあ」
妻が友人の結婚を話題にした。新婚旅行だけが豪華ではない。披露宴は、ホテルのガーデンスペースを白い馬車で横切る演出付き。新居は新郎の親が用意した一戸建て。
まるで自分のことのように話す妻の表情にフッと寂しさが走った。思い過ごしではない。
五年前に結婚したわたしたちの場合は、実に地味なものだった。1十二月三日、もう冬に入りかけた吉日。披露宴に出席してくれた妻の友人たちは口を揃えて言った。
「この神社、披露宴出来るの?」
彼女らが疑うのも無理はなかった。結婚式を挙げた神社は、辺鄙な町はずれにあって古ぼけたものだった。晴れ着に着飾った招待客の顔は一様に戸惑いの色を浮かべていた。
せまっ苦しい畳敷きの小広間で繰り広げられた披露宴は、案に相違した温かさに包まれて和気あいあいと進んだ。
印象的だったのは、妻が学んだ短大の恩師である老教授の祝辞だった。
「和子さん。あなたは幸せですよ。心優しい旦那さまと素晴らしいお友達とご家族の、人間的なあたたかさがいっぱい溢れた、このお式と披露宴がそれを約束していますよ。ケバケバと、どうにも落ち着いて祝えない昨今の結婚式場は、器械的で我慢の出来ない冷たさがありますからね。あなたと旦那さまは、最高の式場で、これ以上はない旅立ちを、決して忘れずに、幸せな家庭を築いてください」
さて、新婚旅行は行かずに済まそうと二人の間では決めていたが、結局、親孝行の方を選んだ。親が願う「人並み」を実行するために京都へ向かった。
オフシーズンの平日。寒々とした京都を半日がかりで歩いて探した民宿。なんと泊り客は私たちだけ。障子戸がガタガタいってるのを、部屋に落ち着いたわたしと妻は顔を見合わせてプーッと噴き出した。
夜中に、空腹を抑えるため、降り始めた粉雪の中を夫婦は体を寄せ合って歩き回った。やっと見つけた駄菓子屋でポテトチップスを買って食べた。
誰がどう見ても、「人並み」とは思えぬ散々な新婚旅行だったのは間違いない。
あれから、もう五年になる。早く二児に恵まれたので、新婚旅行以来、二人で旅を楽しむ機会もなく今日に至っている。
最近の贅沢は、月一回ぐらい家族揃って出かける外食ぐらい。その食事中にしょっちゅう新婚旅行を話題にする。にこやかに、そして皮肉を少し込めて話す。
「懸命やったね」
「何が?」
「新婚旅行」
「ああ、あれか…ごめんな、甲斐性がなかったからな」
「もう、何言ってるの。あんなの誰でも体験できるもんじゃないでしょ。……いい思い出よ。絶対忘れっこないから」
「うん。そうだな」
思わず笑ってしまった。妻も笑っている。
負け惜しみじゃなく、金をかけたからといって、それだけでいい思い出が買えるはずがない。脳裏に蘇る鮮やかな記憶の世界に後悔はない。あたたかな雰囲気の中に、相好を崩し幸せを味わっている自分の姿が、そこにあるのに気が付いた。
(朝日・昭和62年8月16日掲載)
「十日間の休暇でヨーロッパに新婚旅行だって。いいなあ」
妻が友人の結婚を話題にした。新婚旅行だけが豪華ではない。披露宴は、ホテルのガーデンスペースを白い馬車で横切る演出付き。新居は新郎の親が用意した一戸建て。
まるで自分のことのように話す妻の表情にフッと寂しさが走った。思い過ごしではない。
五年前に結婚したわたしたちの場合は、実に地味なものだった。1十二月三日、もう冬に入りかけた吉日。披露宴に出席してくれた妻の友人たちは口を揃えて言った。
「この神社、披露宴出来るの?」
彼女らが疑うのも無理はなかった。結婚式を挙げた神社は、辺鄙な町はずれにあって古ぼけたものだった。晴れ着に着飾った招待客の顔は一様に戸惑いの色を浮かべていた。
せまっ苦しい畳敷きの小広間で繰り広げられた披露宴は、案に相違した温かさに包まれて和気あいあいと進んだ。
印象的だったのは、妻が学んだ短大の恩師である老教授の祝辞だった。
「和子さん。あなたは幸せですよ。心優しい旦那さまと素晴らしいお友達とご家族の、人間的なあたたかさがいっぱい溢れた、このお式と披露宴がそれを約束していますよ。ケバケバと、どうにも落ち着いて祝えない昨今の結婚式場は、器械的で我慢の出来ない冷たさがありますからね。あなたと旦那さまは、最高の式場で、これ以上はない旅立ちを、決して忘れずに、幸せな家庭を築いてください」
さて、新婚旅行は行かずに済まそうと二人の間では決めていたが、結局、親孝行の方を選んだ。親が願う「人並み」を実行するために京都へ向かった。
オフシーズンの平日。寒々とした京都を半日がかりで歩いて探した民宿。なんと泊り客は私たちだけ。障子戸がガタガタいってるのを、部屋に落ち着いたわたしと妻は顔を見合わせてプーッと噴き出した。
夜中に、空腹を抑えるため、降り始めた粉雪の中を夫婦は体を寄せ合って歩き回った。やっと見つけた駄菓子屋でポテトチップスを買って食べた。
誰がどう見ても、「人並み」とは思えぬ散々な新婚旅行だったのは間違いない。
あれから、もう五年になる。早く二児に恵まれたので、新婚旅行以来、二人で旅を楽しむ機会もなく今日に至っている。
最近の贅沢は、月一回ぐらい家族揃って出かける外食ぐらい。その食事中にしょっちゅう新婚旅行を話題にする。にこやかに、そして皮肉を少し込めて話す。
「懸命やったね」
「何が?」
「新婚旅行」
「ああ、あれか…ごめんな、甲斐性がなかったからな」
「もう、何言ってるの。あんなの誰でも体験できるもんじゃないでしょ。……いい思い出よ。絶対忘れっこないから」
「うん。そうだな」
思わず笑ってしまった。妻も笑っている。
負け惜しみじゃなく、金をかけたからといって、それだけでいい思い出が買えるはずがない。脳裏に蘇る鮮やかな記憶の世界に後悔はない。あたたかな雰囲気の中に、相好を崩し幸せを味わっている自分の姿が、そこにあるのに気が付いた。
(朝日・昭和62年8月16日掲載)