こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・これもまた

2015年04月26日 18時05分37秒 | 文芸
これもまた

これもまた
欠かせない
大切ないち日

田植えの
季節を
迎えようと
皆が集う

草を刈り
溝を浚える

日和に
暑さが混じる
汗が光り
息を荒げる

これもまた
生みの苦しみ

男たちの
ざわめきと笑い
いち日は終わる

その
逞しさが
これもまた
眩しい
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女子会の正体

2015年04月26日 11時17分26秒 | 文芸
 三か月に一回の女子会。別名ママ会。いま高校生の末娘の幼稚園から高校にかけて同じクラスの母親仲間の慰労会および情報共有会。
 女子会はメンバーの自宅からスタート。ひととおりお茶を愉しみながらダベッたところで、話題に上がったレストランや飲食店に移動。噂の食事を堪能。最後は喫茶店でペチャクチャ。
 なんと8時間勤務ならぬ談笑。呑んだり食ったり忙しいが口は止まらない。女5人寄れば姦しいを実証するおしゃべりはまる一日絶好調!
「同級生のMくん、受験に失敗してフリーターだって…」
「ウソー!頭いい子なのに」
「S美ちゃん、工業高校よ」
「ホンマ!暮らしで一番なのに、どうして?」
「将来は工学博士よ…」
「隣村のYさんとこ、離婚だって。娘さんかわいそうよ…」
「わたしらも気をつけなくちゃあね」
 実に無責任極まる放言風景。話題は無限。子どもの同級生の近況や噂話。ご近所や先生方の動向や事件。時には高尚な政治のはなしまで。尽きることはない、多岐サイサイのネタ。
 尽きるのは時間だけ。ゆうしょくのよういやなにかで、もはや時間切れとなる。ところが来るまで送り届けてもらった自宅の玄関前で、またまた立ち話を延々と数時間。
「ただいま」
 玄関を開けたら、無口な夫が音なしの非難を隠さないし背で迎える。息子と娘が、「腹減ったーっ!」訴えてくる。
 でも止められない、女の本音をぶつけて日頃のストレスを晴らせる至上の時を……!
(2012年10月2日・毎日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

絵手紙

2015年04月26日 04時40分56秒 | Weblog
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

先生の元気を・その2(完結)

2015年04月26日 02時36分59秒 | 文芸
先生以外のメンバーと初めて顔が合ったのは、三度目の稽古日だった。三人のメンバーを紹介された。
 公演が決まった。小山内薫の戯曲『息子』と真船豊作品『寒鴨』の二作品だった。未来社の薄っぺらな戯曲本が用意されていた。
「とっつぁん、まだ生きてるかい?」
『息子』の登場人物のひとり、捕り手の台詞を読まされた。相手役の息子は、初お目見えの郵便局員。彼は劇団のスターと言う。今で言うイケメンのひとりだった。
「うん、いいね。この配役でやりましょう」
 ひととおり読み終わると、先生はあっさりと即決した。
「先生…ボク、初めてだし、出来る自信…ありません…」
 戸惑い、恐る恐る小声で訴えた。
「大丈夫。齋藤くんは芝居をやりたいんやろ?それは芝居が好きってことや。そやろ?」」
「はい。それはそうやけど…」
「なら、それで充分や。やる気がなかったらどないもならんけど、君ぐらい生真面目で、やる気があれば、そら誰にも負けへん」
 それでも躊躇する私を、先生は遮った。
「好きなもんは、それを手にするために何とかしようと頑張る。芝居かて同じや。好きやったら、それを舞台にのせるために努力を惜しまんやろが」
「はい…」
「ボクが指導するから、それに懸命になってくれたら充分や。ここで芝居作るんは芝居が好きや言うんが資格や。他にはあらへん」
 先生の言葉は妙に納得できた。
 芝居作りは始まった。日を追うごとに顔ぶれがどんどん増える。美容師や、会社員、職人……年齢もバラバラの顔ぶれだった。本当に芝居をやるのかと疑問なメンバーもいたが、先生の言葉で思い込みは一蹴された。
「みんな好きなんや、お芝居作りが。ここにいる仲間みんなが好きなんや。そんなみんなが力を合わせる。そらもう怖いものはあらへん。ええお芝居が出来るよ。さあ、本番の日に向けて思い切りみんなで楽しもうやないか」 
「はい!」
 みんなの顔がパッと輝いた。
 芝居作りは順調だった。なんと初めて取り組む私なのに、先生は『息子』の捕り手役の他に、『寒鴨』の猟師役を割り振った。
「二つの役なんて無理です。頭悪いからセリフ覚えられるかどうか…自信が……」
「大丈夫や。君は若いから、すぐ頭に入るよ」
 先生の邪気のない笑顔に、それ以上何も言えなかった。それどころか、なぜかやれるという気にさえなった。
 よーく考えれば、十数人もいて、配役を初体験の新米メンバーにダブルキャストだなんて、おかしな話だった。後で知ったことだが、表舞台にあがるよりも、裏方でいいからアマ劇団の活動に参加したいと望むメンバーが殆どだった。曲がりなりにも役者脂肪の私は、先生には貴重な存在だったのだろう。  
遂に迎えた舞台公演。先生はみんなの顔を見回して、やっぱり底抜けの笑顔で鼓舞した。
「さあ、みんな思い切り楽しもう」
 舞台はハチャメチャに終わった。『寒鴨』では台詞に詰まると、私は大袈裟な身振り手振りで誤魔化そうと懸命に動き回った。それでも観客に白けた雰囲気は生まれなかった。
「よかったよかった。齋藤君、どないや初舞台は?芝居ってええもんやろ。みんなもあない喜んでくれてるんやから」
 先生は実に嬉しそうだった。楽屋見舞いに差し入れられた栗饅頭を頬張り、私にもすすめながら、ひとりごちた。
「やる側も見る側も、あない目を輝かしているのん素晴らしいやろ。だから、僕は芝居が好きや。止められへんねん」
 何の惑いもない先生の言葉だった。私はハッと気付いた。
(これが先生の芝居なんや。舞台は楽しいないとあかんねん…楽しないと!)
 打ち上げで先生は底抜けに明るかった。誰彼となく、「君のおかげで舞台は成功したんや。ありがとう、ありがとう!」と連呼した。その姿は不思議に輝いて見えた。
 先生との芝居作りは八年に渡った。初舞台であれほどボロボロの醜態を見せた私は、いつしか劇団のメインキャストをつとめるまでになった。他グループに客演もこなした。
 先生の芝居はただ楽しいだけではなかった。社会問題をえぐる重厚な脚本を次々と書き上げ舞台に上げた。褒めるだけの演出にしか見えなかったが、先生の意図にこたえれるスタッフキャストは確かに育った。先生の芝居作りは、仲間への信頼感熟成が根底にあってのものだと、ようやく気付いた。
「芝居は、舞台は仲間さえおったら出来るんや。みんなが勝手に作ってくれよる。そないなったらもう出来ひんことはのうなるやろ」
 先生の飄々とした姿芝居に取り組むは、誰をも惹きつける何かがある。やはり先生は只者ではなかった。
「齋藤君、どこに行っても芝居はできるさかいな。君は芝居がホンマに大好きや。だからいつも懸命になれる。それが最大の武器や。それで上手くなれる。そんな君やから、ぜひ続けてほしい、お芝居を。君の存在が、新しい君をどんどん育てる。ボクの好きな芝居の担い手をね」
 転職で姫路に移るとき、先生は私にそれとなく使命を与えた。笑顔で、好物の甘いものを頬張りながら…。私もご相伴に預かった。
「先生。デザートに美味しいものを注文しましょうか?」
「うん。それはいいなあ。サラダけじゃ物足りん。少しくらいならいいよな。じゃあ僕はお汁粉がいい」
 先生は相好を崩した。甘いものに目がないのは年齢に変わりなく、やっぱり健在だった。
 お汁粉をとても美味そうに味わう先生の好々爺ぶりに、思わず幸せを感じた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする