オエ!オエ!オエッ!
小さい頃から薬を飲むのは大の苦手。中でも粉薬は最悪で、いつだってオブラートを必要とした。
オブラートに包むのだが、それはそれは念入りに。時には二重三重に包み込み、丸薬をはるかに上回るサイズでオブラートのかたまりに。どう見ても喉をスーッと通過するとは思えない。案の定喉の中途に引っ掛かる。
「オエッ!オエッ!」
外面はくすりのかけらも見えないオブラートなのに、これがまた難物。中身がくすりだって意識もぬぐえない上に、その大きさといったら。そうは簡単に喉を通過する筈がない。
カラえづきを繰り返している間に湿り気を帯びたオブラートは、喉にベッタリ貼り付いてびくともしなくなる。
慌てて水を飲んで飲み下そうと試みるが、そのうちオブラートが溶ける!そして中身が舌の味覚を感じる領域へ、くすりが一気にバラまかれる。こうなると、もうたまったものじゃなくなる。苦―い!
「くすりを呑むぐらいなら、せめて注射に代えてくれ!」
頼まれたお医者さんは、それはどうもと冷たい。また粉薬をくれた。いじめだ。
くすり騒動は、わたしの原風景である。
(こうべ・平成11年5月30日掲載)