こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ペット事情

2015年05月06日 17時51分55秒 | 文芸
昼間ひとりだと時々寂しさを紛らすためにウサギのフクちゃんに相手をしてもらいます。ケージから出して、部屋の中をピョンピョンとびまわるのを眺めているとずいぶん癒されます。ところが、フクちゃんをケージに戻す際に、いつもひと苦労。捉まえて入れようとして一度ひっかけられて痛い目をしました。だから、「フクちゃんフクちゃん」とネコナデゴエならずウサギナデゴエで誘い入れようと、四苦八苦。敵もサルものじゃない、ウサギもので一向に誘いに乗らない。最後はおやつの袋を握って「カサカサゴソゴソ」と音をさせてケージに誘い込んで、やっと胸をなでおろす。癒された後は、ちょっぴりストレスを戴く、我が家のペットの我儘ぶりを紹介しました。
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ちっぽけな冒険を前にして

2015年05月06日 07時37分35秒 | 文芸
ちっぽけな冒険を前にして

 三歳の息子が「大きい公園に行くよ」と急に言った。「え?」と息子の顔をマジマジと見る。「ぼく一人で行ける」。ちいさい胸を張る。応えにつまり、言いよどむわたしを尻目に「いいよ。でもお姉ちゃんと一緒にね」とニコニコ話しかける妻。しり込みする“おびんたれ”の娘と手をつながせて、信号のこと知らない人への対処……などをゆっくり言い聞かせ、「よーし、じゃあ遊んできなさい。気をつけてね」と元気よく送りだす。顔を輝かせた息子は、ひとつ上の姉を引っ張って、とことこ歩いていく。そのちっぽけな背中を見つめながら、不安と期待の入りまじった複雑な気持ち。
「大丈夫かな?」心配顔で振り返ると「この駄目親父め!いつまでも子どもはしばっとけないんだから。記念すべき初めての冒険なんだよ、あの子らにとって」と力強く言う妻。でも、やはり心配なのだろう、何度も外の通りへ出て、子どもらが目指す公園の方を眺めている。100メートル先にある公園だが、子どもたちの足ではまだまだ行きついていない。
「ただいま」
 存分に遊んできた子どもたちは手を継ぎあって帰ってきた。「ブランコに乗ったよ」「滑り台、おねえちゃんと一緒に滑ったんだから!」得意満面で報告し合うちいさい兄弟たち。初めての自分らだけの冒険にちょっぴり興奮気味である。それを見てホッと胸を撫で下ろすわたし。
「こいつらもずいぶん成長してるんだな」と嬉しくなる半面、親になりきるのも、そう簡単じゃないと、新たな覚悟を固める父親でもあった。
(神戸・1988年3月2日掲載)
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絵手紙

2015年05月06日 02時11分26秒 | Weblog
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駅前戦争・その2

2015年05月06日 00時54分18秒 | 文芸
新学期になれば小学館の学年雑誌『小学一年生』が婦人誌にとって代わる。新一年生の顧客を掴めば後は六年生まで購読して貰える時代だった。勿論これもノルマがある。嫌なら自分で売ればいい。しかし、婦人誌の横に『小学一年生』を積み上げた光景は何とも言えぬやるせなさがあった。
「事故で貨物が大分遅れてますねん」
 顔馴染みの駅員が済まなそうに弁解した。
「弱ったなあ。そいでいつ着くんやいな?」
 S文館の男が顔をしかめて訊いた。いつも雑誌の受け出しに来ている。年配でややいかつい顔つきで、怖さを感じる。高校を出てから書店員になったばかりの私には及びもつかないベテランだった。
「あんたとこも大変やけど、いつ荷物が付くか分からんのに、ここにおってもしょうがないやろ。いっぺん店に戻ろか。駅から連絡が入るさかい」
 男の言葉を素直に聞くわけにはいかない。相手はライバル相手である。いいように言いくるめられて割を食わされるかも知れない。注意するに越したことはない。
自分の仕事は今日発売の人気週刊誌を店に一刻も早く持ち帰ることだ。といってもそれが無理な状況はすぐに解決しそうにない。ただ臨機応変に行動できるほど、仕事に慣れていない新米である。即答も出来ず下を向くと、男はさらに促した。
「心配せんでええ。連絡があっても、そっちが来るまで駅で待ってたるわ」
 男の申し出は意外だった。その笑顔に他意は見えない。男の店は駅前だから、連絡が入った時点で即座に駆けつけられる。優位な立場だから余裕があるのだろうか?しかし断る理由はない。コクリと頷いた。
「あんた、どっから来てるんや?」
「加西の山奥です」
 住所を聞かれると、いつもそう答える。田舎だと自覚しているし、事実交通は不便そのものだ。自転車で十五分ほど走るとローカル線の終着駅。そこから五駅で乗り継ぎ駅に至る。そこで加古川線に乗り換える。結局一時間以上はかかる通勤だった。
「ほうけ。わしは姫路や。浜手の方でなあ…。祭りは、そらごっついとこや……!」
 男は話し好きだった。荷受け所の前でしばらく立ち話が続いた。私は気が気ではない。荷受けの仕事が出来ないのなら、少しでも早く店に帰って次の仕事の指示を受けなければと焦る。
「そんなせっぱつまった顔せんと、のんびり行こうな」
「でも…?」
「仕事はな、逃げへんねん。いっつも根(こん)詰めとったら、倒れてまうぞ。倒れたら同僚に迷惑かけてまうやろ。違うか?」
ハイ」
 男の言う通りだった。
「そやけど、新人さんは、気ィ―使うわなあ。まあ、後は気にせんと帰りや」
 男は言いたい放題で駅を離れた。
「ほんま。また汽車遅れてんねんね。しゃーないわ」
 店頭の責任者はベテランだけに万事心得ていた。
「着いたら駅から連絡があります」
「よっしゃ。戦争はそれからやな」
(つづく)
 
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