こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・内弁慶

2015年05月11日 13時29分16秒 | 文芸
内弁慶

物心づいたとき
自分の
口下手さ加減に
気づいた

相手が
大人、子ども、親兄弟……
対峙すれば
誰にも
まともに喋れない

赤らむ顔
胸の鼓動は早まる
ことばが詰まる

おかげで
可愛げのない
子どもに
なってしまった

その人生は
喋られぬ苦しみを
誰も
理解しない社会で
耐え続けたもの

それでもここに
ちゃんと生きている
少しは幸せな
人生を
生きている
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

運動会でスッテンコロリン

2015年05月11日 03時41分10秒 | 文芸
運動会で走ってケガしてビリに

 妻が妊娠中のため、上の子どもが通っている保育園の運動会の父母参加競技に出るはめになった。その上、地区対抗リレーの選手までお鉢が回って来た。
「もう年だから、あまり無理しないでよ」
 妻の声援(?)に送られての出場。しかし、いざ会場へ行き、見回せば他の選手たちはおなかが出っ張った“オジさんタイプ”ばかり。
(こりゃ、もしかしたら勝てるかも…!)なんて恐ろしい考えに変わったのは、まだまだ若者だ、と自負しているわたしなのだからムリはない。
 自信満々で三番手のスタート台に立った。4位でバトンを受けて快調に追い抜いて2位に。気をよくしてトップに肉薄する。
(これは抜けるぞ!子どものヒーローに慣れるぞ!)と思って力んだ瞬間、視界から何もかもが消えた。足がもつれてスッテンコロリン!転倒したのだ。しかも、わが子のキリンクラスの席の真ん前だった。ツイてなかった。
 ビリになって、腕と膝に負傷を追って、その上、子どものヒーローになり損ねる。=痛々しい姿で父母席に戻ると、妻が呆れ顔で迎えてくれた。キツイ皮肉つきで。
「もう40歳、体がついてこん世代は超えてるのよ。自覚がないなんて恥ずかしい!」
(神戸・1988年10月28日掲載)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

絵手紙

2015年05月11日 01時16分22秒 | Weblog
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妊婦さん、いらっしゃい!(完結)

2015年05月11日 00時11分49秒 | 文芸
「えらい待たせてもうてごめんね」
 品の備わった老婦人が、ぼたもちを盛った大皿を手にあらわれた。反射的に立ち上がりかけた彩奈を、そーっと制すると言った。
「妊婦さんは気を使うたらあかんし。もちろん重いもん持ってもあかんねんで。この時ばかりは女王様でおったらええんや、おんなは」
 彩奈の怪訝な顔を見て取ったのだろう。
「わたしがここの院長です。榊原花梨いいます。もう90やけど、まだまだボケとりまへんで」
 しっかりした口調の自己紹介だった。
「甘いもん、お腹の子にもええんやで。遠慮せんと食べなさい」
「はあ」
「ああ、診察かいな?心配せんでええ。妊娠は病気やないんやから。あとでちょこっと診させて貰うけど。最初はそれで充分」
 榊原院長のふくよかな顔に安心感があった。
「センセイ、こんにちは!」
 応接間に女性が顔を覗かせた。
「有希さんか。約束時間ギリギリやで。はよ入り。甘いもん出来てるさかい」
「わあ、嬉しい、ボタモチつくりはったんやね、ウワー!美味しそう」
 出っ張ったお腹を抱えている。もう臨月は近そうだ。彼女のあとからまた妊婦が続いた。みんなおやつタイムが約束の時間らしい。
 応接間は賑やかな様相を呈した。榊原院長を囲んだ女子会である。彩奈を迎え入れた女性がお茶を運んで来た。煎茶だった。ボタモチを食べるには、持って来いの渋さである。
 彩奈はいつの間にか榊原院長が設けたお茶会の一員だった。身構えていたものが嘘みたいに綺麗さっぱりと消えた。
「有希はん、もうそろそろかいな?」
「予定日は昨日なんですよ…」
「そんなん気にせんでええ。お腹の子は出とうなったら、ちゃんとお母ちゃんに教えてくれるから、安心しい。気―ラクにして。センセイが診るには、今夜あたりやな」
「ほんまですか?ほなら入院せな」
「ああ、そないしたらええ。旦那さんはどないしてや?ちゃんと出産に立ち会えるんか」
「はい。予定日の前後は有給を取ってくれてますねん。はよ赤ちゃんの顔が見たいいうてます」
「ほうかほうか。ほな有希さんも頑張らなあかんのう」
「はい!頑張ります!」。
 榊原院長と有希の会話は、傍にいる彩奈の心を和ませた。
「ノリコさんは、検診やったなあ。お茶終わったら診てみようか。この前までは余分な下りもんもなかったし、タンパクも異常なし……。どや?お腹の子、元気しとるやろ」
「はい。時々蹴りよるんです。主人が、こない元気なんやから間違いのう男やな、なんていうんですけど」
「それは生まれた時の楽しみにしときなさい」
「はい。そりゃあもう、主人と二人して、男や女やと毎日楽しんでます」」
「そうかそうか、それはお腹の子も幸せやな」
 彩奈は自分の顔が緩むのを知った。なんとも不思議な快感があった。
「さあ、ほなら、関本さん、ちょっと診てみまひょか。今日は旦那さん、忙しいんやな。次回はいっぺんお二人で来てください。出産は女だけのもんやあらへん。夫婦ふたりで迎えて、一緒に頑張り、一緒に喜ぶもんやから」
「はい。うちの人も喜んで来さして貰うおもいます。いえ、一緒に来ます」」
 彩奈の心は決まった。榊原先生なら、生まれる子供も満面の笑みは間違いないだろう。
(完結)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする