こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・母の日には

2015年05月10日 15時13分58秒 | 文芸
母の日には

朝から
出かけてしまった
妻と娘たち  

しずかに
時がすぎる

きょうは
母の日
わたしに出番はない
それは
わかっているけれど……?

考えてみれば
いつもと変わらぬ
ひとりぼっちの時間
それは
わかっているけれど……?

亡き母を
懐かしく思い出す
神妙に
時を過ごす
それが
わたしの母の日
それは
わかっているけれど……?
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みどりの正体

2015年05月10日 14時05分22秒 | 文芸
 裏山に登らなくなったのはいつ以来だろうか。高校生になった頃から縁がなくなった。それでも、山の豊かな新緑は荒みがちになる私の心をいつも癒してくれる。
 五十数年前、祖父に連れられて植林を手伝った。父と兄、一家の男総出の作業だった。六年生の私も一人前の顔をして加わった。
 山の斜面にそってヒノキの苗木を植えた。大変な水やりもバケツリレーで谷川の水を運び上げた。苗木に添え木をし、下草を刈りこんだ。平地でもしんどい作業の連続だったが、汗まみれになって取り組んだ。
「お前らが大人になった頃には一丁前の木になっちょるぞ。こないして昔から山を守って来たんじゃ。次はお前らが引き継ぐんじゃ」
 休憩の時、孫に祖父は何度も繰り返した。それが不可能な時代になってしまった。山は倒木が目立ち、手入れもされず荒れ放題。それなのに、外から眺める山一面の緑。家族の手で植えたヒノキが生み出している。
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絵手紙

2015年05月10日 10時30分44秒 | 絵手紙
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妊婦さん、いらしゃい!

2015年05月10日 04時59分11秒 | 文芸
「うちも息子がひとりいるから、お母さんの大変さはよく判るの。他人ごとじゃないんよ」
 恵那さんはたいしたことないと受け流したが、彩奈と俊哉はいくら感謝してもし足りなかった。あれ以来、恵那さんに頼る状況に遭遇しなかった。またその機会が訪れた。
「助産院じゃ駄目?」
 恵那さんは意外な名称を口にした。助産院?(産婆さんのことよね…)彩奈は戸惑いを隠せなかった。進歩的なイメージが強い恵那さんと『産婆さん』がどう考えても繋がらなかった。
「…あのう、産婆さん…ですよね?」
「そうよ。あたしの息子をとりあげてくれたとこ」
「?」
あいた口がふさがらないとは、こういうことを言うのだろう。恵那さんは設備の整った産婦人科病院ではなく、産婆さんが取り上げる助産院で出産している。信じられなかった。
「いい産婆さんなんだ。もう高齢だけど腕は確かよ。それに妊婦のことよく判ってるわ
「はあ、そうなんですか」
「行ってみる?」
 即答できずにいる彩奈に発破がかかった。
「まず一度あって見なさい、センセイに。決めるのはそれからでいいんじゃない」
 結局彩奈は頷いた。
「ママさんのいうことだろ。間違いないよ。行ってみろ行ってみろ、なんにしても損はないだろ」
 俊哉は無責任に囃したてた。(もう他人ごとだと思って…あんたも当事者なんだからね。忘れるなよ)彩奈は胸の中で毒づいた。
 榊原助産院は、大通りから路地に入ると、ズーッと奥まったところにあった。前に車を停めるスペースはない。『車でお越しの方は、裏手に駐車場があります』と書かれた掲示板が、外れかかっている。建物も相当な年代物だった。ただ構えはしっかりしている。開院当時は、かなり贅沢な造りだと想像できた。
 チャイムらしきものが見当たらないので、重々しい引き戸を押し開けた。
「こんにちわ!」
 一度では何の反応もなかった。三度目でようやく人の気配を感じた。出て来たのは六十代の女性だった。
「すみません。恵那さんから紹介された、関本というものですが…」
「ああ、関本さん。伺うてますよ。どうぞどうぞ、入ってくださいな」
 愛想よく通されたのは応接間。申し込みの手続きをするにはそぐわぬレイアウトである。
「ここでお待ちください。センセイ、いまお菓子作ってはりますんや」
「はあ?」
 優しさが溢れた女性の笑顔に、彩奈は誘われて頬笑んだ。抱えている不安が消えていく。
 応接間は質素だが、こじんまりとまとまって暖かみがあった。
(つづく)
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