私語対策
1) 私語そのものをただちに悪とみなさない
国分学部長の示唆に基づいて、私語をするのは、それなりに理由があると考えてみるようにした。
たとえば、板書の文字が読めなかったり、内容がわかりにくかったりして隣の人に聞いていることもある。「私語即悪」との思いで注意すると教室全体の雰囲気が反抗的になる。「私語即理」ありとの思いを持っていれば、注意も柔らかくなる。皆にとって有効な私語ならオープンにしてほしい旨を伝える。時には、2人、3人でもり盛り上がった私語になってしまうこともあるが、そういう時には、退出といったような暴力的な方法ではなく、座席を移動してもらうようなソフトな対策をとるようにした。
不思議なことに、私語に対してこうした了解的な?態度で接すると、教室全体の雰囲気も柔らかくなり授業もしやすくなる。
2) マイクロ実習を頻繁に導入する
理解を確認するため、あるいは、考えてもらうために、1回の授業で2,3回は、5~10分程度の実習や小クイズを行う。
たとえば、偏差値の説明をしたら、では、次の数値で計算してみよう、あるいは、質問紙の冒頭のあいさつ文を書いてみようなどなど。それらは単位認定の材料として使うことを最初に宣言してあるので、一生懸命にやってくれる。
3) ノート取りをさせる
板書するかわりにパワーポイントをあらかじめ作成しておいて、その内容をノートさせる。その際、一枚をすべて一度に見せないで、
行単位で逐次提示していく。ノートしたら、関連する話があれば、板書を使って補足する、また次の行を提示して補足することを繰り返す。
この授業で私語が起こるのは、パワーポイントの提示物に誤字脱字やなんらかの不備があるときである。これが公共性のある私語である。こんなとき、「私語即悪」の思いでいては、貴重な機会を逃してしまう。
4) 内容を精選する
心理学研究法は自分にとって得意な領域である。しかも、1年目の講義を始めた時、丁度、その関連のテキストを執筆していて、のりにのっていた。そんな時は、えてしてあれもこれも話そう、話さねばとなる。それが教える内容の精選をおろそかにさせてしまうことがある。それでも関連知識が十分な学生なら、それなりにメリハリをつけて自分の知識として取り込んでもらえるが、心理学研究法なんてはじめてというような学生にとっては、ちんぷんかんぷんであろう。
基本的な知識に限定してそれを丁寧に教えることに徹しないと、学生のほうは受け入れてくれない。知識量半分、時間倍、の感覚で授業を設計してみた。それでも、学生に伝わったのはその半分かなーという感触しかない。