月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

278.三年峠シリーズ①-嗚呼、あと三年の命、岡山県久米郡、和歌山城下でも-(月刊「祭」2020.5月5号)

2020-05-25 22:37:00 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
●日韓両国の小学三年生が学ぶ三年峠
 村の境の三年峠で転ぶと三年しか生きられないという伝説をもとにした、「三年とうげ・삼년고개(サンニョンコゲ)」は、日韓の小学三年生が国語の教材として学んでいます。
 大筋のストーリーは、
「おじいさんが三年峠で転んで不安がる。お見舞いに来た少年が、だったら二回ころべば六年、三回ころべば九年生きられるとアドバイスして、おじいさんが笑顔で転びまくる」
といったものです。

 実は似た伝承は、日本にもいくつか残っています。今回はそれを紹介します。なお、和歌山の事例はこの文章を参考にしました。ほかの参考文献は適宜あげていきます。

●岡山県久米郡の護法祭
 毎年、八月十五日、久米郡美咲町両山寺では、護法祭と呼ばれる行事が夜に施行されます。この中でゴーサマと呼ばれる神仏の依代となった人がトランス状態に入り境内を動きまわります。
 その中で、触れられた人は三年以内に死んでしまうといいます(ゲストハウスたびのあしあとのスタッフの方のご教示)。
 八月十四日(旧暦七月十四日前後)は死者の魂を呼び寄せるお盆の儀礼の一環とも言えるでしょう。Wikiぺdiaによると、護法善神がゴーサマ役の人に乗り移るとのことで、両山寺だけでなく、近隣の寺院でも同様の儀礼が行われていたようです。
 寺院というのはそういうものかもしれませんが、この世とあの世がつながる時に三年寿命伝承が伝わるのは興味深い点と言えるでしょう。
 
↑朝日新聞のYouTube映像より

●和歌山城下の三年坂
 和歌山城と県立美術館通りの間に三年坂という坂があります。ここにも転ぶと三年で死ぬという伝承があるようです。ニュース和歌山(2019.07.27)の記事には、和歌山市立博物館学芸員さんの話として、以下の内容を紹介しています。
 『紀街の詠(ながめ)』という1796年の書物には、女たらしの折助はその坂で声を夜毎にかけていた。ある夜、同じように声をかけていたが、急用を思い出し、坂を行こうとしたときに、提灯の火が消え転んでしまった。それを見た作者が「坂でころんでさんねん(残念)」と表現している。残念がいつのころからか三年になったのでは
「紀街の詠」たる書物の所在は、管理人はまだ探せていません。
 ウィキpディアによると、元和五年(1619)から寛文七年(1667)年の紀州藩主である徳川頼宣によって作られた坂だそうです。


↑iPhone8のアプリの地図

次号では、わりと有名な三年寿命伝承と意外な三年寿命伝承を紹介します。

参考文献:
黒川麻美「日韓教科書教材に関する比較研究 : 民話「三年峠」に着目して」
『広島大学大学院教育学研究科紀要. 第一部, 学習開発関連領域64』2015