月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

285.卒論で祭を書くということ(月刊「祭」2020.6月5号)

2020-06-17 10:32:00 | 屋台・だんじり・神輿-研究史・名著-
祭を題材にした卒論を書いた学生さんのことを最近のニュースを見て思い出しました。
 
 




 
 
●屋台やだんじりを題材にした卒論を書く学生
 昔からいたけど管理人が知らないだけなのかもしれませんが、いろんな大学のいろんな学部で屋台・太鼓台、だんじりを題材に卒論を書いている学生をよく見るようになって来ました。
 その中のいくつかは、管理人も何人かのお手伝いをさせていただきました。そのまま、プロの学者になる方は今のところいませんが、研究史的な名作となるものもあるし、そうでなくとも、いずれも人の心を打つものでした。まずは、それを紹介していきます。
 
●名作ぞろい
2007年度 Tnさん(三木市)
 管理人の同級生の知り合いの学生さんでした。管理人とっても、卒論をアドバイスする初めての経験でした。どうアドバイスしたらいいか分からないまま、知っとることを殴り書きしてメールに送ってしまいました。その読みにくい文章を申し訳程度に簡潔にまとめつつ、独自の調査をふんだんにもりこんで三木市の祭とその中の大宮八幡宮の祭の現状をまとめました。
  当時は新町屋台が事故で消失した年でしたが、新町の復活を願う文章に心打たれました。
 
2011年度 Tkさん(岡山県)
 管理人が協力したというより、一緒に祭を見たといのが正確でしょうか^_^;
 瀬戸内地域に分布する古い布団太鼓を、悉皆調査していき、布団太鼓ができた時は川を伝って伝播していっだろうこと、大塩平八郎の乱以降にだんじりにとってかわってきたことなどを結論づけました。
 播州屋台研究家の粕谷さんが、その著作で批判的な文章を掲載していました。粕谷さんが批判する対照となるのは、間違いなく一流の証です。
 
2012年 Iwさん(三木市)
 三木市大宮八幡宮の屋台のそれぞれの歴史を調査し、違うルーツの屋台を大宮八幡宮仕様にしていることを指摘しました。管理人のダラダラした話を簡潔にまとめ、三木が誇る屋台研究家横山氏のご教示を的確にまとめ上げて、結論を導きました。
 先代のみき歴史資料館の学芸員さんも、参考にしていました。
 
2018年度 Dさん(三木市)
 一番仲良くしてる友達ですが、実はまだ読んでません^_^; 卒論の発表は聞きました。
 地元の祭だけでなく、北条節句祭の某屋台青年団に入団し、実際に活動しないと分からない屋台の性質の考察も入れたそうです。新しく加わった宮本屋台を含めた北条節句祭の全屋台の来歴を明らかにしています。
 しかし、卒論は彼の活動の「ほんの一部」というのが正確です。近畿圏内の屋台蔵、だんじり小屋の所在地を調べGoogleマップにプロットし、膨大な屋台だんじり マップが今も作られ続けています。
 
2020年度 Ioさん(たつの市)
  新型コロナ禍の中ですが、今年も頑張っている学生さんがいます。内容は秘密^_^
 
●祭を卒論に選んだ学生さんたちの功績
 管理人が学生のころは、あくまで体感ですが、屋台やだんじりの研究がそこまで活発に行われているようには思えませんでした。しかし、上のような学生さんたちが現れることによって、大学の先生方も関心を持つようになったのではないかとも感じています。
 また、それぞれの場で祭などの地域に貢献しはじめているかつての学生さんもいるようです。
 そして何よりも管理人にとっては、祭の卒論にかかわれたた(余計な口をはさんだ)体験は本当に楽しいものでした。
 
 
編集後記
 小池東京都知事が卒論必須の学部を卒論もなく卒業したとのたまっていました。その卒業証書は「学力証明」ではなく、「コネ証明」といったところでしょう。
 同時に思い出したのは自分が卒論を書いた時のこと、そして、上に書いた卒論のお手伝いをさせていただいた学生さんたちのことです。どの学生さんも就活、バイトと本当に忙しい中でも、目を輝かせながら大好きな祭のことを調べていました(一人はメールでのやりとりですが、後でお礼を言ってもらえた時はやはりそうでした。)。
 「目を輝かせて一つのことを調べる。」これは、大学生の特権です。せっかく大学に行かせてもらいながら、それを経験せずに卒業だけを主張する小池知事の中身のなさが、哀れにおもえてきます。