月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

287.大阪府知事のだんじりサポート発言②-祭開催の懸念事項-(月刊「祭」2020.6月7号)

2020-06-20 04:05:00 | 新型コロナと祭、民俗
    
●吉村大阪府知事の岸和田地車サポート発言
 吉村大阪府知事の「岸和田だんじりサポート発言」が祭好き達の注目を集めています。結論から言うと、希望は見えたものの、「祭をやる=屋台・だんじりを大っぴらに出せるか」にはまだまだ疑問が残ります。また、我々のような播州の屋台を担ぐ祭は、岸和田の地車のような曳く祭より開催が困難になると思われます。それらを下の順序で書いていきます。

①吉村大阪府知事の発言した内容
②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
大阪府庁に質問した内容と回答
クリアするべき懸念事項
播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
今回は、④⑤です。

 大阪府知事の6月17日の「だんじり開催でも全力サポート発言」は、核物理学者の中野氏の自粛意味な発言の後押しを受けていると思われます。その論は、一週間の感染者数/累計感染者数=k値とよばれるものが、0に近くなると感染収束に近づくという理論にもとっきます。その理論によると日本は収束への道のりを歩んでおり、自粛の意味もなかったというものです。
 また、病床数の増加などの動きはいまのところないという府の担当職員の方のご回答をいただきました(6月18日)。
 今回は、本当に祭を「やる」場合の懸念事項と、播州の屋台祭が岸和田のだんじり祭以上に開催が困難になることを指摘します。

 ④クリアするべき懸念事項
感染数や医療状況の懸念事項
①依然として新規感染者数が3月の感染爆発前夜(一月後には300人となった)と同程度の30人以上の日々が続いている。
②新型コロナウィルスは高気温下では活動レベルが落ちるにも関わらず、①の状態が3月よりずっと気温が高い6月で保たれていること
③数学的知見から「日本国内においては」自粛は効果がなかったという主張をしている中野氏だが、国内で感染を抑えられている理由はまだはっきりしていないこと。
④③のような状況でありながらも、夜の町など距離の近い飲食物の共用の場、韓国での宗教団体の感染爆発などの事例から、それに近い条件が揃うと思われる祭の危険性は否めないこと
⑤祭が行われる各地域では、首都圏や阪神地域のような医療資源が整っているとは言い難く、重症化しやすい高齢者は多い傾向があると思われること


祭をする人自身の懸念事項
 ①-④を屋台やだんじりのリーダーに求めるのは、かなり酷なものになります。求められるのは、根性とか心意気ではなく、それらを形にするための科学的な根拠に基づいた努力です。

①酒に酔った人がたくさんいる中で、予防を徹底的にしながらどこまで祭ができるのか? あるいは、必要最低限のお神酒以外、酒を一切飲まないで、屋台、地車を運行できるのか?

②逐一除菌をして、飛沫を他人にうつさないようにマスクをして、間隔をとって(少ない人数で)屋台や地車を動かすなど肉体的につらいものになると思われる巡行を本当にやる気があるのか?

 「できるだけ距離をとって手洗いをしよう」のような子どもでも言える標語ではなく、運行時、担ぎ手、太鼓打、飲食の場、共用物使用時など、あらゆる人、場面、場所での具体的な感染予防策を調べて作り、必要な物品を調達し、周知徹底し実行できるか。

④感染者が出た場合に、地域的な医療崩壊が起きるかどうか検証し、それを防ぐための医療資源を地域行政に確保させることはできるのか。

播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
 今回の話題は大阪府と岸和田でしたが、最後に播州の屋台祭の開催について考えます。結論から言うと、開催は岸和田よりも困難なものになると思われます。それは、次の2点からです。

ⅰ 開催時期
 岸和田などのだんじり祭は9月にも行われます。もちろん10月にもありますが、一番規模の大きな岸和田市岸城神社氏子域、弥栄神社氏子域のものは、9月の祭りとなります。
 一方で播州の屋台祭は9月に行われるものはほとんどなく、殆どが10月の開催となります。つまり、播州の方が岸和田などより新型コロナが活出しやすいとされる寒い時期と重なります。

ⅱ 密着した運行
 岸和田の曳く祭りと比べて、播州屋台の祭は担ぐ祭です。担ぐために、狭い場所に密集して担ぐことが増えてきます。担ぎ手の交代も必要になってきます。
 その時に、屋台が担がれたままだとなかなか、
人がのく→棒を消毒→抗体の人が入る
という順序をとるのは困難を決めると思います。

吉村大阪府知事のサポート発言もありましたが、祭をやるために超えなければならない懸念事項は、重いものが数多くあり、実現は極めて困難だという見通しになると思われます。











286.大阪府知事のだんじりサポート発言① -知事の発言の根拠と府の感染者対策-(月刊「祭」2020.6月6号)

2020-06-20 01:53:00 | 新型コロナと祭、民俗
●吉村大阪府知事の岸和田地車サポート発言
 吉村大阪府知事の「岸和田だんじりサポート発言」が祭好き達の注目を集めています。結論から言うと、希望は見えたものの、「祭をやる=屋台・だんじりを大っぴらに出せるか」にはまだまだ疑問が残ります。また、我々のような播州の屋台を担ぐ祭は、岸和田の地車のような曳く祭より開催が困難になると思われます。それらを下の順序で書いていきます。

①吉村大阪府知事の発言した内容
②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
大阪府庁に質問した内容と回答
クリアするべき懸念事項
播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
今回は、①②③までです。

①吉村大阪府知事の発言した内容
 発言をしている時の動画がアップロードされていますが、削除されるかもしれません。2020.6.17 MBS 「ミント」のインタビューにおいて、大凡下のようなことを言っています。
①政教分離な大原則があるから、だんじり祭をやるやらないを決めるのは地元の人
②自分はだんじりファン
③やる、やらないどちらの決断を岸和田がしても府として全力でサポートする。
④感染者が出た場合のサポートなどを全力でしたい。
‪といった内容でした。
 ③の発言は、知事が地車の曳行を容認したようにとらえられて、祭好き達のSNSに広がっています。

 個人的には、政治家として、政党としても、吉村知事を信用する気にはなれません。でも、「だんじりファン」と言った時だけは、「政治家の顔」から、祭を見てかっこええと思う「少年の顔」になったように見え、その言葉に嘘はないように見えました。それは、岸和田の地車の魅力がなせる技でもあるのでしょう。
 
 とはいうものの、吉村府知事は経済活動の回復をいそぐあまり、やや希望的観測で根拠としているだろう研究を解釈しているように感じています。それを次に書いていきます。

 ②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
  吉村府知事が、岸和田だんじり祭の開催を容認したとも捉えられる発言をした背景には、2020年6月11日か12日(リンク先では11日とも12日とも思える表現で書かれている)に行われた大阪府新型コロナウィルス専門家会議において、『「大阪大学 核物理研究センター」のセンター長・中野貴志教授が、「感染拡大の収束に外出自粛や休業要請による効果はなかった」と明言した。』ことによるものだと思われます。
 中野氏は感染収束の指標としているK値(直近一週間の総感染者数/総感染者数)というものを用いて、その効果はないとしたそうです。残念ながら、なぜ、この数が有効なのか有効でないのかは分かりません。
 記事から理解できたことは、下の通りです。
①中野氏が核物理学者であること
②日本は感染をうまく抑えこめていると中野氏が主張していること
③K値で見るとピークアウトは3月28日だと中野氏が主張していること
④三連休の気の緩みは関係ないとと中野氏が主張していること
⑤国内の自粛政策は後から見たら過剰だが、ことさら間違っていると責めるのは間違っていると中野氏が主張していること
⑥朝野座長は飲酒接待の場でクラスターが発生している事実を指摘していること。
 このサイトによると、中野氏の理論は統計的には「今のところ正確」ですが、疫学的(例えば新型コロナウィルスの性質?)からは正確かどうかは分からないと言ったところでしょう。
 また、赤点ギリギリの数学音痴の管理人の見解ですが、中野氏の理論だと日を追うごとに分母が大きくなるので、どうしても楽観的な数字が出やすくなるように思ってしまいます。
 また、結局飲食を共にする場では集団感染が起きる事例は夏でも続いていることなどを考えると、やっぱり厳しいのかなと考えてしまいます。


 大阪府庁に質問した内容と回答 
 そこで、岸和田だんじり祭などを開催して感染者が出た時のためのサポートとして病床数を増やす計画があるのかどうかを聞こうと思い立ち、大阪府の新型コロナ相談室に電話で問い合わせました。しかし、そこから「府民お問い合わせセンター」に電話するよう案内され、そこから災害対策課に繋がれてお話を聞くことになりました。
おおよその質問の内容と、回答は大凡下のようなものでした。なお質問番号は煩雑さ回避のために便宜的につけました。

----これより---
質問1
だんじりなどで感染者が出た場合などの病床数を増やす計画はあるのか

答え
(だんじりをやる場合の対策をしろという)指示はまだ降りてきていない。
また、さらに病床数ふやすことについても今のところはやっていない。
 感染対策課、災害対策課、(新型コロナ対応のためにつくられた?)健康医療チームなどで協力して対応することになると思われる。

質問2
祭に間に合うのか??

答え
答えてくれた人の個人的な感覚としては、軽症者のためのホテルの確保は一月かからずにできたなどノウハウはあると思う
----
今のところ、具体的に動いているという様子ではないものの、軽症者用のホテルの確保などのノウハウには自信が伺えたと感じています。しかしながら、祭の開催の是非を判断するのは、大阪府がどこまでできるかが分かった上で検証しなければならないことだと思われます。

次号では似たような内容と言われかねませんが、やる上での懸念事項と播州の屋台祭が、岸和田のだんじり祭以上に開催に困難が伴うだろう点を挙げていきます。