特権的な地位に甘んじているくせに、少数派や民衆の味方面するのは筋が通らない。リベラルの旗手である上野千鶴子はジェンダー論の権威として知られているが、東大の名誉教授であり、学問的なヒーラルヒーの頂点に君臨し、権威と金とをお上から与えられている。それでいて、若者に向かって左翼活動家のように「平等に貧しくなれ」ということを口にするのは、断じて許されることではない。高村武義氏がツイッターでその点を追及したらば、多くのネット民の共感を得て、目下大炎上中である▼上野は都心のタワマンに住み、八ヶ岳山麓に別荘を持ち、高級外車を乗り回している。庶民には考えられないことである。日本のアカデミズムの主流は、上野のような者たちで占められている。権力を批判したいのであれば、野にあって叫ぶことが本筋ではないのか。初期マルクスの『経哲草稿』を翻訳した田中吉六は、一肉体労働者として研究にいそしんだ。魯迅の研究家であった竹内好も、60年安保の岸内閣の強行採決に抗議して、東京都立大学教授の職を辞した▼きれいごとリベラルほど度し難い人間はいない。人類の歴史を回顧するならならば、額に汗して働く民衆ではなく、言葉を駆使できる知識人が特権な地位を与えられてきた。それを自己否定することなく、民衆を指導するというのは、あまりにもおこがましい。勝ち組の知識人に、民衆の労苦など分かりようがないからだ。
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九州大学に5億円を寄付した中本博雄さんは、旧満州から終戦翌年に帰国した。生計をたてる親に代わり、弟をおぶって小学校に通った時期もあった。科学や数学が好きで九州大学への進学を勧められた。「高校の先生が家に5回も来てくれたが、おやじは返事をしてくれなかった」。家計を考えると、泣く泣くあきらめた。あきらめるしかなかった。
高校を出て父が営む商店で働いた。仕事の一つが設計図の複写。感光紙に焼き付ける青写真が主流だった。「普通の紙に複写できれば便利なのに」。仕事を終えた夜、開発に没頭した。静電気、元素の性質、設計。独学して6年。「なんべんも失敗した」末に、「静電気を使った任意変倍可能な複写装置」の試作機が完成した。「幸福の女神は透明で、深く考えた時に初めて見える。なにせ考えることです」。「情熱が執念に変わるまで勉強すれば道は開ける」。
米国でも日本でも特許を得た。今のコピー機の元祖の一つだが、特許料はもらっていない。「大学の卒業証書のつもりでした」。
1987年に製図や印刷の会社を福岡市で創業。2004年に経営を次男に譲り、郊外で妻と暮らす。愛車は軽自動車、自宅は築45年である。「苦労してためたお金ですが、貧しくても勉学したい人が使えば何十年か後に生きると思うんです」。
子どもも孫もいるが、「相続しすぎると独立心が育たない」と考え、かつて進学を目指していた大学への寄付を決めた。妻の稔恵さん(74)も二つ返事で賛成してくれた。
「死んで財産を残すよりも若い方に渡した方が、お金が生きる。そこから新しい発明や発見が出て、日本が栄えていけばいい。あの世に行ったときは財産ゼロという死に方をしたい」。