草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

『沈黙の艦隊』は今の時代を予見していた

2024年05月23日 | マンガ
 映画「沈黙の艦隊」を見て、あれが1988年から96年にかけて「モーニング」に連載されていたマンガだというのを、改めて再確認した。
 しかも、夏目房之介は1997年に出版した『マンガと戦争』において、何と「『沈黙の艦隊』の予見性」という一文を書いていたのである。
 その連載中にベルリンの壁は崩壊し、91年にはソ連そのものが崩壊したのだった。しかし、その当時以上に、今の時代は「沈黙の艦隊」のことが話題にされている。
 原子力潜水艦「やまと」は日本が資金、技術者を提供してアメリカにつくらせた。アメリカ軍の指揮下に入るはずだったが、海江田艦長は艦ごと独立を宣言し、独立国家「やまと」を宣言する。そして日本との同盟関係を結び、日本国内では対米従属派ではなく、自立派が政権を握ったのである。
「やまと」は核を装備してうるのではないか、という疑惑を持たれたが、それを抑止力としつつ、日本の自立を手助けするのである。
 作者のかわぐきかいじは、世界国家建設に向けての一里塚と考えていたようだが、現在の私たちからすれば、日本の安全保障上の選択肢として、潜水艦による抑止力の強化ということと結びつく。
 自衛隊は通常型であっても、世界に誇るような潜水艦を建造し、それが南西諸島を防衛する虎の子となっている。ミサイルの開発も急速に進みつつあり、いつでも核を搭載できるようになっている。
 どこまでアメリカが容認するかという問題が絶えずあったが、もはやパックス・アメリカーナではなくなっており、日本は自力で日本の国民の命を守るしかなくなってきた。「沈黙の艦隊」は夏目が言うように予見のマンガであり、戦争漫画としては、戦闘シーンの迫力といい、傑作中の傑作なのである。
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