読み終わりました。3度目です。朝日新聞夕刊に昭和57年8月30日~58年11月4日まで掲載。夕刊が楽しみでした。単行本になり、直ぐに読みました。「虚」と「実」から「虚実冥合・四谷信濃坂」。冥合とは知らず知らずのうちに、一つに合すること。全盲となった馬琴の口述を嫁のお路が書く。漢字を知らない「いろは」ばかりのお路が書く。想像を絶する苦難の中で立ち上がったものがある。虚実冥合の世界。それをかいま見た北斎は何も言わずに去る。私の涙腺がゆるむ。読書にとって至高の世界です。なぜか、私が読んだ山田風太郎の小説はこれだけです。多分これからも読まないと思う。作者と読者の一期一会もあってもいいかと。