遁走状態 (新潮): ブライアン エヴンソン, 柴田 元幸 訳 2014-04-26 10:43:46 | 読書 「どこまでも醒めた、19の悪夢」とある。悪夢ならしょっちゅう見ているよと思いながら読み始めた。 導入部分が上手いので、直ぐに小説世界に引き込まれる。 * 表現も的確である。 七番の「テントのなかの姉妹」に下の一節がある。 「下の子はいろんなことに、上の子と同じくらい早く気づくとは限らないけれど、いったん気づいたら上の子より強く感じるみたいだった。」 感性には確かに二種類あるようだ。 広く色々と感じる感性と早くはないし多面的ではないが深く洞察する感性。 姉妹の性格を的確に描写している。気配りと頑固。 * 自分とは? 、他人とは?、記憶とは?、現実とは? 分かっているようで、改めて問われると答えるのは容易ではない。この小説は異世界に紛れ込んだ恐怖小説ではない。異世界がシリアスな世界なのだ。いや、その境もないといった方がいいだろう。まさに、遁走状態。僕は安部公房を思い出した。