創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

夏目漱石「こころ」読書ノート4

2014-05-31 13:09:50 | 読書
夏目漱石「こころ」読書ノート4

「さきほど先生のいわれた、人間は誰でもいざという間際に悪人になるんだという意味ですね。あれはどういう意味ですか」
「意味といって、深い意味もありません。――つまり事実なんですよ。理窟(りくつ)じゃないんだ」
「事実で差支(さしつかえ)ありませんが、私の伺いたいのは、いざという間際という意味なんです。一体どんな場合を指すのですか」
 先生は笑い出した。あたかも時機の過ぎた今、もう熱心に説明する張合(はりあい)がないといった風(ふう)に。
「金さ君。金を見ると、どんな君子でもすぐ悪人になるのさ」→夏目漱石「こころ」先生の遺書(二十九)


読書ノート4
先生の遺書(二十七)〜(二十九)は「人と金」がテーマになっています。
「金」という世俗的な事柄が文学と馴染まないという意見もあるでしょうが、漱石は重要なテーマにしています。
これは他の作品でも度々取り扱っています。
最後の先生の科白は説得力があります。
「金さ君。金を見ると、どんな君子でもすぐ悪人になるのさ」


夏目漱石「こころ」読書ノート3

2014-05-31 13:07:17 | 読書
夏目漱石「こころ」読書ノート3

先生は蒼(あお)い透(す)き徹(とお)るような空を見ていた。私は私を包む若葉の色に心を奪われていた。その若葉の色をよくよく眺めると、一々違っていた。同じ楓(かえで)の樹(き)でも同じ色を枝に着けているものは一つもなかった。細い杉苗の頂(いただき)に投げ被(かぶ)せてあった先生の帽子が風に吹かれて落ちた。→夏目漱石「こころ」先生の遺書(二十六)

読書ノート3
見事な描写です。
「天声人語」なんかを書写するよりも、このような文章を書き写したいですね。
私はコピペですけれど……。

夏目漱石「こころ」読書ノート2

2014-05-31 12:54:07 | 読書
夏目漱石「こころ」読書ノート2

「私は嫌われてるとは思いません。嫌われる訳がないんですもの。しかし先生は世間が嫌(きらい)なんでしょう。世間というより近頃(ちかごろ)では人間が嫌になっているんでしょう。だからその人間の一人(いちにん)として、私も好かれるはずがないじゃありませんか」
 奥さんの嫌われているという意味がやっと私に呑(の)み込めた。→連載:夏目漱石「こころ」先生の遺書(十七)

読書ノート2
先生→奥さん→嫌われる理由がない。
先生→人間→嫌い
奥さん=人間
先生→奥さん→嫌い
漱石のレトリックです。
屁理屈。
漱石の小説はレトリックのオンパレードです。
屁理屈は修辞法、比喩と名前を変えて文学の本質となる。
先生は科学の分野まで展開してます。
地球は丸い。→野球のボールは丸い。→よって、地球は野球のボールである。
大変だぁ~。漱石はこんなこと言ってませんので。念のため。