創作日記&作品集

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「熊の結婚」そして「女のいない男たち」・文学界6月号

2014-06-15 15:29:09 | 読書
1・「熊の結婚」・諸隈元著
妻と図書館に行った。妻が本を探している間、借りる予定のない僕はガラス張りの中庭を臨む椅子に腰かけて、しばらく本を読む。梅雨の中庭はしっとりしている。緑が美しい。
ここ2回、「熊の結婚」・文学界六月号を少しずつ読んでいた。新人賞受賞作である。どんな小説が選ばれたのだろうという興味もあったが、熱心に読んでいたわけではなかった。暇つぶしだった。
その日、雑誌の棚を見ていて、「熊の結婚」をふと思い出した。雑誌を持って椅子に戻った。
「どこまで読んだっけ」。探している内に妻がやって来た。借りようかやめようか迷った。とにかく借りようと決心したのは、「村上春樹が描く男と女」という特集が目に入ったからだ。短編集「女のいない男たち」の事だろう。
「熊の結婚」は読むのが辛かった。単語みたいなセンテンスが続く。プチプチと切れる。多分シナリオにしてみたら、脈絡のない科白が並ぶだろう。
この小説はどこに行き着くのだろうという興味だけで読んでいった。男の作者か……。これも意外だった。100枚の小説って、結構長いんだなあ。新人賞がなぜこの小説なんだろう。選評を読みたかった。いつの間にか僕もプチプチと考える。
最後の一文で納得した。この小説も「女のいない男たち」である。男と女の性。端的に言えば「性交」について書かれた小説である。
主人公の夫婦に性交はない。抱擁もない。自慰をする夫を眺める妻。妻は精子が欲しいと言った。夫は自慰をして精液を「はい」と渡す。
男にとって女性は不可解であると単純な論理を書いているのではない。男にとっての女性の不在である。性交によりそれはより深まるのである。「熊の結婚」は男によって書かれた必然性を持っている。
このテーマは「女のいない男たち」・村上春樹著によって文学に昇華される。身体を貫くような男の孤独として。
次は特集ー村上春樹が描く男と女」について書こうと思う。