創作日記&作品集

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池窪弘務作品集2一九九四年(四十八歳)

2021-12-03 10:36:02 | ラジオドラマ
池窪弘務作品集2一九九四年(四十八歳)
『一人で跳べる(ラジオドラマ)』
1994-01-08(FMシアター)
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全て音のみで書いた。
科白と音のみのドラマである。
すなわちモノローグがない。
不思議にすらすらと書けた。
手応えがあった。
入選した。

前年に友達が亡くなった。
大学の卓球部で四年間一緒だった。
私が部長で彼女が副部長だった。
市民サークルの卓球で、彼女は頭をラケットでこんこんと叩いたと言う。
彼女のよくやる癖だった。
その後倒れたと聞いた。
一度も意識は戻らなかった。
今でも細かい仕種まで思い出す。
男の先輩の烈しいラリーに耐える。
汗が飛ぶ。
病院に駆けつけた時は死の直後だった。
私は卓球に対する興味を失った。

ドラマの主役は長塚京三さん。
オーラがすごかった。
最後の科白がピタッと決まった。
それまで姦しかったスタッフルームも水を打ったように黙った。
「ピアスがキラリと光った」
長塚京三さんはさらっと言った。
私は最初に考えたタイトルが「ピアス」であったことを思い出していた。