ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2012.12.1 EC4回目投与9日後、師走初日。受け容れてもらった次には受け容れる

2012-12-01 13:59:10 | 日記
 今日から師走。朝から冷え込んでいる。相変わらず頭は重いが、本日からクラビット服用開始。溜まった洗濯物をベランダ一杯に干して、師走始動だ。

 以前もご紹介した朝日新聞医療サイトアピタルからマイタウン静岡に連載中の渡邊亨先生のコラムの最新号を転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

がん内科医の独り言 患者の心理(1)寄り添って治療開始が大切(2012.11.30)

 乳がんは、しこりとして自分で見つけることがよくあります。多くの女性は乳房に現れる様々な変化に対し、とても敏感です。とくに性周期に伴って痛みが出たり、張りを感じたりするので、心配になって病院を受診する方も多いです。
 一方、全くその逆の女性もいます。ある年末、40代前半の女性が背中を丸めるように外来を訪れました。顔色は悪く、不安な表情で、付き添いのご主人が「先生、ひどい状態なんですよ」と切り出しました。
 診察すると、胸の左側にメロンぐらいの大きさの膨らみがあり、黄緑色で、真ん中がくぼみ、ただれて出血し、悪臭を放っていました。
 本人はうつむいたまま黙っています。よく話を聞いてみると、3~4年前から、左乳房のしこりには気づいていました。PTA役員の仕事が忙しくて病院も行かずにいるうちに大きくなり、その年の初めには皮膚が赤くなり、やがて暗赤色になり、夏の終わりにはみるみる大きくなり、皮膚が崩れ、出血するようになったそうです。
 ご主人は九州に単身赴任しており、中学3年の息子さんがガーゼや消毒薬を薬店で買って処置していました。しかし、いよいよ出血も増え、悪臭も強烈になってきたところへ、単身赴任から戻ったご主人が異変に気付き、受診したのでした。
 明らかな進行がんで、わきの下のリンパ節も拳ぐらいに腫れていました。こんな時、私たち医師はつい、「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」と思います。でも、それは、絶対に言ってはいけないのです。
 患者は、病院に行かなくてはと思いつつ、がんと言われるのが怖くて、その日まで悩みながらも受診しなかったのでしょう。他にも他人には言えない事情もあるのだと思います。
 だから、今日、受診してよかったね、これから、できることを一つずつやっていきましょう、と、患者に寄り添って治療をスタートすることが大切なのです。(浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)

(転載終了)※  ※  ※

 そう、どうしてこんなに・・・とこの場面で言われたって、それで事態が改善されるわけではない。それどころか、これから治療を進めていく上で、医師と患者の信頼関係に悪影響を与えそうである。
 とにかく、まずは受け容れてもらうこと。そうすれば、これからこの先生と一緒に治療していこう、という気持ちになるだろう。このままにしていてはいけない、そう思っていたのは他でもない患者さん本人だったのだろうから。
 けれど、その次には自分で受け容れることも大切だ。客観的に今、自分がどういう状況であり、何をしなければならないのか、眼をそむけていても現実は決してどこかに行ってはくれないし、なかったことにはならない。
 深呼吸をして態勢を立て直して、自分で受け容れて、治療に立ち向かって行ってほしいと強く思う。

 それにしても中3の息子さんがガーゼや消毒薬でお母さんの皮膚の崩れを処置していたというのだから、息を呑む。
 我が息子に置き換えるー彼が私の傷をケアしてくれるなどということーとなると、とても実感が持てない(そもそも私は、8年前に温存手術をした後には、彼と一緒にお風呂に入っていない。)。
 一体どんな気持ちで大好きな大切な(そうでなければ、そもそもそんな処置をしてあげないだろう。)お母さんの、崩れて出血や悪臭が酷くなった胸-かつて自分が沢山抱っこしてもらい、おっぱいを飲ませてもらったであろう胸-の皮膚の処置をしてあげていたのか。ちょっと考えただけで胸が潰れそうになる。

 全く無治療であったからこうした状況になっているのだろうけれど、きちんと治療をすれば驚くほど奏功して、皮膚が綺麗になってしまう、しこりがうんと小さくなってしまうというケースはいくらでもあると聞く。

 このお母さんがご主人や息子さんの支えを胸に、どうかこれからの治療を前向きに頑張ってほしい、と心から願わずにいられない。
 そして、1人でも多くの方が、怖くて受診しないなどということなく、心配だったら一日も早く一度受診してほしいと思う。
 早く発見出来れば完治を目指せるし、治療による体への侵襲は少ないに決まっているのだから。



コメント (5)
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