大型連休も後半。どこにも行かないのも寂しいという夫のリクエストで、江の島に1泊することになった。目指すは以前から夫が一度泊まってみたいと言っていた和風老舗旅館である。
寝坊してもよいというのに普段とほぼ変わらない時間に自然に目覚め、朝の連続テレビ小説を視ながら朝食を済ませ、のんびりと出発。今日もいいお天気だ。
急ぐ旅ではない。特急に乗ることもなく、JRから私鉄の各駅停車に乗り換え、終点まで。家族連れやカップルで、先に行くロマンスカーは満席、凄い人出である。到着した片瀬江ノ島駅の駅舎は竜宮城を模しており、皆が思い思いに記念写真撮影中である。さすがに海沿いだけあって風が強い。日傘を差すのを諦める。
随分前に訪れたことがあるけれど、弁天橋を渡るのは久しぶり。かつて来た時の印象とは随分違う。観光案内所では、島の展望台の入場は1時間待ちと表示が出ている。橋を渡り終わり、青銅の鳥居をくぐり、弁財天の仲見世通りを見上げると、なんと人、人、人。身動きが取れないほど、言ってみれば朝の通勤電車並みの混雑である。後から後から人が湧き出てくる感じである。宿の敷地内に入ると、別世界のごとく静かでほっとする。荷物を預け、態勢を立て直す。
今日はこれから鎌倉に行こうと思っていると告げると、フロントで「昨日は大混雑で帰路、江ノ電に乗るのに1時間待たされたということでしたから、どうぞ気を付けて」と送り出される。
身軽になった夫はいきなりお腹が空いたようで、まずは女夫饅頭を2種類買い込んでいる。食事の前に甘い物なんて…と言いつつ私もお相伴。お饅頭を食べ終わったか食べ終わらないかのうちに、今度は生シラスのトレーを手に持っている。これまた一口頂くが、シラスの看板があちこちではためく中、なんと釜揚げシラスまでゲットしている。とどまるところを知らない食いしん坊である。江ノ電の駅を目指して再び橋を渡るが、どこもかしこも人だらけ。どこの食堂もレストランも長蛇の列である。お目当ては皆、シラス丼やらシラスピザやらシラスの様子。
江ノ電の駅で一日フリー券を購入しようとすると、「今日は混んでいます。払い戻しはできないですが、本当にいいですか」と念押しされる。
江ノ電は単線だし、1時間に数本の運行だから、そもそも臨時増便など望めない。1台を見送って、次の電車に乗ったが、それはそれは大混雑、もうもみくちゃである。鉄ママよろしく運転手席の真後ろに陣取るも、20分ほどで到着する筈が大幅な遅延でぐったり。腰痛でだんだん不機嫌になってきる。やはりGWに出かけてくるのが間違っていた、と思うが後悔先に立たず、である。
小町通りも人で埋め尽くされており溜息が出る。ああ、ヨガに行って、地元で買い物でもして本を読んでのんびりしていればよかったなあ、とついつい口に出てしまう。
とにかくまずはランチを、と選り好みしている場合でもないので目についた駅前のレストランに入る。何も下調べもなく入ったけれど、創業50年、地元の人気店ということでどれも美味しく当たりだった。とりあえずお腹が満たされ、水分も補給して、少し元気になる。
小町通を歩いていては埒があきそうもなく、若宮大路に出てみるが、ここも同じようなもの。鳩サブレで有名なお菓子屋さんも人が溢れてとても買い物できる状態ではない。何度も来ているけれど、ここまで酷い混雑に遭遇したのは初めてだ。そして、どこの飲食店にも「生シラス入荷しました」「シラスあります」「シラス」「シラス」とシラスのオンパレード、日本人はこんなにシラスが好きだったのか?と思うが、4月から漁が解禁になったばかりで、今年は水揚げ量が少なく貴重なのだ、ということを後で知った。
鶴岡八幡宮も当然ながら大群の人である。お参りするのにどれだけかかるかわからないし、「見ごろです」という看板に惹かれて、神苑ぼたん庭園に入ってみる。ここは入園料もかかるせいか人口密度が低く、少し息がつける。八幡宮の創建800年を記念して開園された廻遊式の日本庭園だという。夫は真冬に藁囲いの中で咲く正月ぼたんを見たことがあるそうだけれど、私は初めて。ピンク、白、黄色、赤紫の大輪が見事に咲き誇り、沢山の花びらはまるでペーパークラフトのよう。
庭園を出ると、藤棚の藤の花も今が盛りと満開である。ちょうど風になびく藤の花は薄紫のカーテンのようだ。すっかり心癒されて、ようやく足を延ばして良かったかな、と思う。
とはいえ、のんびりしていては帰りが大変になるし、どこかでお茶をして帰ろうと駅方向へ折り返す。どこもかしこもこれまた長蛇の列。
ようやく先月末オープンしたばかりの、胡蝶蘭の鉢で埋まっている洋菓子店の2階のカフェに入ることが出来た。ケーキと紅茶に元気をもらって、「いざ、鎌倉」ではなく「いざ、鎌倉出発」である。
覚悟はしていたけれど、駅に入る列の最後尾が見つからない。これでもか、これでもかと延々と道路の先まで伸びている。乗車までに40分かかりますというアナウンスがあり、いやはや、GWにここに来てはいけないということを実感する。警備の方たちが声をからしながら、それでもなんと子供たちにはキャンディを配布するサービスをしており、ちょっぴり気持ちが和む。
思いのほか早く駅構内に入ることが出来、5時前に無事に戻ってくることが出来た。
江の島は、さすがに午前中に着いた時に比べれば人が少なくなっているだろうと思ったのだが、とんでもない。なおも島の頂上を目指す観光客の列は続いており、のけぞってしまう。
旅館に入ると、すぐにお部屋に通される。和室の大きな窓からは海が真正面、プールも見える。お天気が良ければ富士山とご対面のようだけれど、残念ながら雲に隠れてその姿を拝むことが出来ない。
まずは一風呂浴びてから、ということで夫は弁天洞窟風呂へ、私はローマ風呂へ向かった。10日ほど前にもローマ風呂のある温泉に宿泊したばかりなので、なんだかローマ風呂づいているけれど、ここのローマ風呂は年季が違う。国登録有形文化財で、1930年頃、当時の経営者が造ったそうだ。広さは45平方メートルの洋風浴室で、ステンドグラスのドーム型の天井が大きな特徴。
壁のタイルやテラコッタは有名なタイル職人小森忍の作品で、ベネチア窓風飾りになっている。脱衣室の孔雀模様のステンドグラスはうっとりするほど素敵。当時の建築費は不明だそうだが、東京オリンピックの頃修復した際には4,000万近くも費やしたというから、大変なものだ。
すっかり気分よく部屋に戻ると、ほどなくして夕食の会席料理が運ばれてきた。上げ膳据え膳で本当に幸せ。とても沢山で完食できずに申し訳ない限り。
食後、お布団を敷きに来てくださった方によると、先週、島全体を紹介したテレビ番組があった所為か、このGWは記録的、殺人的な人出だそうだ。夫はお酒を頂き、気持ちよくお夕寝中。
夜のうちに雨が降るというけれど、明日はいいお天気で富士山が眺められますように。
この後、私は洞窟風呂へ、夫はちゃんとローマ風呂に行くのかしら。
寝坊してもよいというのに普段とほぼ変わらない時間に自然に目覚め、朝の連続テレビ小説を視ながら朝食を済ませ、のんびりと出発。今日もいいお天気だ。
急ぐ旅ではない。特急に乗ることもなく、JRから私鉄の各駅停車に乗り換え、終点まで。家族連れやカップルで、先に行くロマンスカーは満席、凄い人出である。到着した片瀬江ノ島駅の駅舎は竜宮城を模しており、皆が思い思いに記念写真撮影中である。さすがに海沿いだけあって風が強い。日傘を差すのを諦める。
随分前に訪れたことがあるけれど、弁天橋を渡るのは久しぶり。かつて来た時の印象とは随分違う。観光案内所では、島の展望台の入場は1時間待ちと表示が出ている。橋を渡り終わり、青銅の鳥居をくぐり、弁財天の仲見世通りを見上げると、なんと人、人、人。身動きが取れないほど、言ってみれば朝の通勤電車並みの混雑である。後から後から人が湧き出てくる感じである。宿の敷地内に入ると、別世界のごとく静かでほっとする。荷物を預け、態勢を立て直す。
今日はこれから鎌倉に行こうと思っていると告げると、フロントで「昨日は大混雑で帰路、江ノ電に乗るのに1時間待たされたということでしたから、どうぞ気を付けて」と送り出される。
身軽になった夫はいきなりお腹が空いたようで、まずは女夫饅頭を2種類買い込んでいる。食事の前に甘い物なんて…と言いつつ私もお相伴。お饅頭を食べ終わったか食べ終わらないかのうちに、今度は生シラスのトレーを手に持っている。これまた一口頂くが、シラスの看板があちこちではためく中、なんと釜揚げシラスまでゲットしている。とどまるところを知らない食いしん坊である。江ノ電の駅を目指して再び橋を渡るが、どこもかしこも人だらけ。どこの食堂もレストランも長蛇の列である。お目当ては皆、シラス丼やらシラスピザやらシラスの様子。
江ノ電の駅で一日フリー券を購入しようとすると、「今日は混んでいます。払い戻しはできないですが、本当にいいですか」と念押しされる。
江ノ電は単線だし、1時間に数本の運行だから、そもそも臨時増便など望めない。1台を見送って、次の電車に乗ったが、それはそれは大混雑、もうもみくちゃである。鉄ママよろしく運転手席の真後ろに陣取るも、20分ほどで到着する筈が大幅な遅延でぐったり。腰痛でだんだん不機嫌になってきる。やはりGWに出かけてくるのが間違っていた、と思うが後悔先に立たず、である。
小町通りも人で埋め尽くされており溜息が出る。ああ、ヨガに行って、地元で買い物でもして本を読んでのんびりしていればよかったなあ、とついつい口に出てしまう。
とにかくまずはランチを、と選り好みしている場合でもないので目についた駅前のレストランに入る。何も下調べもなく入ったけれど、創業50年、地元の人気店ということでどれも美味しく当たりだった。とりあえずお腹が満たされ、水分も補給して、少し元気になる。
小町通を歩いていては埒があきそうもなく、若宮大路に出てみるが、ここも同じようなもの。鳩サブレで有名なお菓子屋さんも人が溢れてとても買い物できる状態ではない。何度も来ているけれど、ここまで酷い混雑に遭遇したのは初めてだ。そして、どこの飲食店にも「生シラス入荷しました」「シラスあります」「シラス」「シラス」とシラスのオンパレード、日本人はこんなにシラスが好きだったのか?と思うが、4月から漁が解禁になったばかりで、今年は水揚げ量が少なく貴重なのだ、ということを後で知った。
鶴岡八幡宮も当然ながら大群の人である。お参りするのにどれだけかかるかわからないし、「見ごろです」という看板に惹かれて、神苑ぼたん庭園に入ってみる。ここは入園料もかかるせいか人口密度が低く、少し息がつける。八幡宮の創建800年を記念して開園された廻遊式の日本庭園だという。夫は真冬に藁囲いの中で咲く正月ぼたんを見たことがあるそうだけれど、私は初めて。ピンク、白、黄色、赤紫の大輪が見事に咲き誇り、沢山の花びらはまるでペーパークラフトのよう。
庭園を出ると、藤棚の藤の花も今が盛りと満開である。ちょうど風になびく藤の花は薄紫のカーテンのようだ。すっかり心癒されて、ようやく足を延ばして良かったかな、と思う。
とはいえ、のんびりしていては帰りが大変になるし、どこかでお茶をして帰ろうと駅方向へ折り返す。どこもかしこもこれまた長蛇の列。
ようやく先月末オープンしたばかりの、胡蝶蘭の鉢で埋まっている洋菓子店の2階のカフェに入ることが出来た。ケーキと紅茶に元気をもらって、「いざ、鎌倉」ではなく「いざ、鎌倉出発」である。
覚悟はしていたけれど、駅に入る列の最後尾が見つからない。これでもか、これでもかと延々と道路の先まで伸びている。乗車までに40分かかりますというアナウンスがあり、いやはや、GWにここに来てはいけないということを実感する。警備の方たちが声をからしながら、それでもなんと子供たちにはキャンディを配布するサービスをしており、ちょっぴり気持ちが和む。
思いのほか早く駅構内に入ることが出来、5時前に無事に戻ってくることが出来た。
江の島は、さすがに午前中に着いた時に比べれば人が少なくなっているだろうと思ったのだが、とんでもない。なおも島の頂上を目指す観光客の列は続いており、のけぞってしまう。
旅館に入ると、すぐにお部屋に通される。和室の大きな窓からは海が真正面、プールも見える。お天気が良ければ富士山とご対面のようだけれど、残念ながら雲に隠れてその姿を拝むことが出来ない。
まずは一風呂浴びてから、ということで夫は弁天洞窟風呂へ、私はローマ風呂へ向かった。10日ほど前にもローマ風呂のある温泉に宿泊したばかりなので、なんだかローマ風呂づいているけれど、ここのローマ風呂は年季が違う。国登録有形文化財で、1930年頃、当時の経営者が造ったそうだ。広さは45平方メートルの洋風浴室で、ステンドグラスのドーム型の天井が大きな特徴。
壁のタイルやテラコッタは有名なタイル職人小森忍の作品で、ベネチア窓風飾りになっている。脱衣室の孔雀模様のステンドグラスはうっとりするほど素敵。当時の建築費は不明だそうだが、東京オリンピックの頃修復した際には4,000万近くも費やしたというから、大変なものだ。
すっかり気分よく部屋に戻ると、ほどなくして夕食の会席料理が運ばれてきた。上げ膳据え膳で本当に幸せ。とても沢山で完食できずに申し訳ない限り。
食後、お布団を敷きに来てくださった方によると、先週、島全体を紹介したテレビ番組があった所為か、このGWは記録的、殺人的な人出だそうだ。夫はお酒を頂き、気持ちよくお夕寝中。
夜のうちに雨が降るというけれど、明日はいいお天気で富士山が眺められますように。
この後、私は洞窟風呂へ、夫はちゃんとローマ風呂に行くのかしら。