ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2021.10.17 ずっとお預けだった温泉1泊の旅へ母を連れて・・・

2021-10-17 21:51:04 | 

 緊急事態宣言が解除されて早くも半月が経過した。恐々ヒヤヒヤと様子を伺っていたけれど、都内の感染者数が増える兆しは見えず、むしろ2桁台が続いている。

 昨年末、息子が帰省したタイミングで母を連れて家族4人2泊3日の温泉旅行を計画していた。ところがコロナ感染拡大で、泣く泣くキャンセル。その後様子を見ながら温泉好きな母に1泊だけでも一緒に連れて行ってあげられたら、と画策していた。
 けれど、結局のところ緊急事態宣言は9月末まで延長、再延長・・・となり、気づけば今年も残すところ2か月半となってしまった。

 ここに来て漸く宣言も開け、年末まで待つのはちょっと・・・、ということで、母が出かけやすい出発地から特急に乗って行ける温泉を予約した。

 あいにく朝から雨降りである。そして気温もぐっと下がってしまった。それでも目的地は早めに雨が止んで曇り、明日はお天気が良くなるという。晴れ女の威力を信じて出発である。

 旅先ではあれこれ観光に走り回るハードな予定は入れず、午前中は洗濯やゴミ捨て等家事を済ませる。
 タクシーで最寄り駅まで向かい、お昼過ぎにJRの駅の改札で母と合流。好みの駅弁を買って特急に乗り込んだ。車内では母と“錦秋”という名の季節限定の駅弁を頂く。夫は何があっても牛肉弁当一筋(ワンパターンともいう。)である。

 窓の外に見える山々には霞がたなびいていたが、だんだん青空が広がってくる。
乗車時間は1時間40分ほど。目的駅に到着すると更にひんやり、である。ニットとコートを着込んできたけれど、それでもまだ寒いかも、・・・である。聞けば昨日より11度も低く11月中旬の気候だという。

 ホテルのお迎えワゴン車は3人で貸し切り。歩いても10分ほどであるとのこと、あっという間に湖畔の洋館ホテルに到着する。今年4月にオープンしたばかりのホテルは全9室。それぞれ趣きと設えの異なる作りである。
 どの部屋にも源泉かけ流しの専用半露天風呂がある。久しぶりの旅だし、ちょっと張り込んで贅沢な宿である。せっかくなのでホテルの名前を冠するお部屋を予約した。

 チェックインに際しては、桑甘露というほんのり甘いお茶とゼリーのお菓子が供される。同じタイミングであと2組がチェックインしていたが、皆シニア夫婦に高齢の親という3人連れだったり、シニア夫婦だったり、シニアと高齢の親だったり。

 夕食まではホテルに隣接する片倉館見学をガイド付きで予約していたので、荷物をほどいてゆっくり一服する暇もなく、向かう。コートなしで外に出ると風が冷たい。

 国重要文化財指定の片倉館はシルクエンペラーと称された片倉兼太郎が大正末期に西欧、北米への視察旅行に赴いた際、地域住民への福祉施設が充実していることに感銘を受け、温泉大浴場やサウナなどを備えた文化福祉施設を建設したというもの。
 昭和3年に完成し、ほぼそのままの姿で現在に至っている。ちょうど亡父と同い年であるのも何かのご縁か。

 ガイドのYさんも私達3人で貸し切り。I市のご出身ということで、こちらにはもう20年になるそうだ。滑らかなガイドを45分間たっぷり堪能した後は、日帰り天然温泉、ロマン漂う洋風建築の千人風呂へ移動。渡り廊下も重要文化財だという。100人が一度に入浴出来る広さで、深さ1.1mの底に玉砂利を敷きつめた大理石造りだ。当時は立って入浴するのが普通だったようだが、身長140センチそこそこの小柄な母にはちょっと深かったようだ。

 お湯はとても柔らかく、玉砂利の上を歩くと自然のリフレクソロジーのようで気持ち良かった。ステンドグラスや周囲の彫刻も見事。かつては湖の魚を入れた水槽だったという壁面は、現在では光の屈折により様々な色へと変化するオパールグラスになっている。
 駐車場には全国各地のナンバーの車が沢山止まっていたが、近隣の方たちに混じって賑やかな入浴タイムである。
 大風呂に立ったまま浸かった後は、ようやく座ってジャグジー風呂も愉しんで、夫とは2階の休憩所で合流。ここは2014年、映画「テルマエ・ロマエⅡ」の撮影で使われたという。しっかり贔屓のAちゃんのサインをチェックして写真撮影してきた。

 暮れなずむ湖の景色や灯がともる建物はとても美しく幻想的。こちらに来るときには風の冷たさに震えたが、帰路はお風呂の余韻でぽかぽかと暖かく、なんともなかった。ホテルに戻り3階のラウンジで暫し休憩。ちょっと面白い形のロッキングチェアがあり、揺られてきた(何でもやりたがる、と夫は言うが・・・)。

 夕食は「絹」という名前を冠したメインダイニングで、ホテル自慢の信州野菜をたっぷり使った創作フレンチフルコースを頂く。それぞれのテーブルはカーテンで仕切られ半個室になっている。
 お隣のテーブルは“お父様の100歳おめでとう”の誕生日旅だったようで、聞こえてくる声からびっくり。長寿万歳である。

 夫はワインを2種類、母と私も桃やぶどうのジュースで乾杯。
 三種のアミューズには、千曲川の水で育った信州サーモンや、鹿肉や佐久鯉、信州産岩魚のスモークなどご当地ブランド満載。そして前菜、スープ、魚料理、お口直しの林檎のグラニテに、メイン料理には夫は蓼科牛を母と私はオマール海老を。
 食事はシルクパウダーを使った白いシーフードカレーと信州蕎麦に至るまで信州の美味しいものが目白押し。
 更にワゴンサービスのデザートは全種類別腹で制覇。巨峰のシャーベットやシルクプリンがとても美味だった。私はほぼ完食だったけれど、母が完食したのはもう目を見張るばかり。2時間以上食べ続けてもうお腹はぱんぱん。

 食後は皆でS,M,Lの各サイズの部屋着に着替えて人心地着く。膨れたお腹をこなすために部屋の半露天風呂でゆっくりして後は寝るだけという、なんのことはない、まったりシニアの旅である。嗚呼、幸せ。

 明日は午後の特急で早めの帰宅。何も調べてこなかったけれど、近くには美術館も多くあり、チェックアウト後も帰りの特急に合わせて送って頂くまで色々楽しみ方満載のようである。
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