散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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ショウリョウバッタの小さいの

2017-08-04 09:47:17 | 日記

2017年8月4日(金)

 都内某所のビル一階、薬局脇のエレベーターに乗ろうとしてバッタを発見。ショウリョウバッタの小さいので、成長途上と思われる。遠目に見るとアメンボみたいだ。

 こんな環境で生きていけるのか心配、現に元気がないよね、後脚に埃がまとわりついてるよ等々、ちょうどやってきたクリニックの看護師さんに同意を求めるが返事がない。見れば苦しそうに顔を背けている。バッタは苦手なんだそうだ。どこからどう飛んでくるか分からないから、って。大丈夫、頼んだって飛びついてきたりしないから。

 おーい、元気出せよ!

Ω


いざなふ・さそふ・おびく(をびく)/自由と寛容さ??

2017-08-04 07:25:14 | 日記

2017年6月26日(月)

 「おびきよせる」という言葉がある。もちろん「おびく+よせる」なんだろうが、「おびく」とは何だろうとふと思った。

◯ おびく【誘く】 だまして誘い寄せる。「遠矢を射させてぞ誘きける」(太平記 14)

 歴史的仮名遣いが「をびく」か「おびく」か未詳とある。これは大辞林(第三版)。

◯ をびく【誘く】 だまして誘う。「酒盛りして、師高を誘き出して」(長門本平家 3)

 こちらは小学館の古語辞典(昭和41年発行の改訂新版!)

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「おびく・をびく」の他、周知の通り「誘」の字に「いざなふ」と「さそふ」の読みがあり、両者に実はニュアンスの違いがある。

◯ いざなふ【誘ふ】 さそう。ひきいる。「わが大王(おほきみ)の諸人を誘ひたまひ」(万・4094)

◯ さそふ【誘ふ】 ① 連れて行く。連れ去る。「おはすらむところに誘ひ給へ」(源・玉鬘) ② そそのかす。促す。「みづからもいとど涙さへそそのかされて、とどむ方なきに誘はるるなるべし」(源・明石)

 いずれも上掲の古語辞典。

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 え~っと、どうなるのかな。

 万葉の「いざなふ」がいちばん古く、「ひきいる」の意。ついで源氏の「さそふ」は「連れ去る」「そそのかす」。どちらも強制力がかなり強い。平家や太平記にいたって「おびく・をびく」の用例が出てきて、これは力で強制する代わりに奸計をもって陥れるのである。どっちもどっちで悪辣な印象を拭いがたい。「困っちゃうな、デートに誘われて」などという現代の用法などは、よほど温順化されているがいつ頃から出てきたものか。

 そもそも、和語の「いざなふ、さそふ、おびく・をびく」は別個の動詞であって、これをいずれも「誘」という漢字の読みに宛てたのはこちら側の創意だが、そのセンスが面白い。これは半島人には耐え難いことのはずで、韓国は漢字を使うことを残念にも止めてしまったが、漢字を使っていた時代には本邦と違って漢字の読みは常に一つだけだった。

 外国語話者は日本語学習にあたってさぞ頭の痛いことだろうが、クリアすれば他に類を見ない豊かさがある。

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 某局の昨夜のニュースはトランプ氏の新たな移民制限策で、アメリカの伝統である「自由と寛容さが脅かされている」云々と。何で「自由」と「寛容」ではいけなくて、「寛容」だけを「寛容さ」とするのかな。次々と妙なことを考え出すもので、おかげでニュースの内容から瞬間、注意が逸れる。確固たる理由もなしに余計な改変をするのは、任期内に成果を残したい役人の悪弊とばかり思っていたが、役所だけでもないのかな。

 内容に戻って言うなら対岸の批判は容易だが、こちらはそもそも移民受け容れに関して世界標準からケタ外れに遅れているという現実がある。大きな試練に曝される日はたぶん近いのである。

 出がけにて乱文御容赦

Ω