散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
コメント歓迎、ただし仕事関連のお問い合わせには対応していません。

a Day in the Life

2022-02-09 08:37:30 | 日記
2022年2月9日(水)

 2019年11月20日(水)に「龍の道」と名づけた雲:


 似たものが今朝また数条:


 11月と2月では季節のニュアンスに違いもあろうか。ただいまは明日からの強い寒気と降雨降雪の警告がひきもきらず、首都高は「予防的通行止」もあるかとの騒ぎ。そのこととの関係が分る人には分るのだろう。
 気象のことや地層・岩石のこと、高校では「地学」で括られていた事柄を、もう少しわかるようになりたい。
 
 朝刊紙面の退屈な日々が続くかと思えば、ある日にはめくるページ毎に目を奪われ読み入ったりする。

【13面】マーム・ビニー(22) ショートトラック/米国
 いつからか別人格が心の中にいた。名前は「アナ・ディガー」と付けている。「ずっと昔からいた気がする」
 移民として父子家庭で育った。ガーナで生まれ5歳から父のいる米バージニア州に移り、6歳でスケートを始めた。
 つらいことや差別的な経験もした。小学校低学年では疑心暗鬼になりがちで、そんな時に別人格に気づいた。本名を出したくない時に思いついた名前がアナだったという。
 普段はおっとりしていて目立ちたくない性格だ。スケートでは「別人格」で滑っている。氷の上に立つと、目つきが変わる。威圧感のような雰囲気さえも漂う。「もう一人の自分は強く気迫にあふれている」
 氷上での成功体験は、本来の彼女を成長させた。
 20年5月に米ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害されると、発信しないといけないと感じた。反対する父親を説得し自らの SNS で差別への抗議をした…

※ 病理的な解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の発症機序は、「正常」な此岸にこうした対応現象をもっている。多くの人びとが多かれ少なかれやっていることであり、自覚的に活用してみてよい生き残り戦略でもある。

***

【23面】我が身を捨てた先の私小説 ~ 町田康
 人間には自己保存の本能があり、己について考えるときもこれが作用し、それを考えてしまったら自分が破滅してしまうという領域の手前には防壁のようなものがあり、そこから先に進めない。その防壁には、「愛」とか「友情」とか「蜂の頭」とかいったスローガンが書いてあることが多い。西村氏はその壁を越えて己を描き、つねに人間の真実を捉えていた。それこそが西村賢太の私小説家としての矜持であった。
 そしてもう一つ、それを可能にしたのは西村氏の他に類をみない文章感覚である。

※ 町田康の『告白』が異様に面白くて100ページほど一気に読み、そこでふっつり止めてしまったのが、この正月のある日のことだった。

***

【23面】多和田葉子『白鶴亮翅』9
 シュミーデさんは眉をひそめて言った。
 「わたしはついあの事件を連想してしまったんですよ。テロリストたちが毒の出る、サハリンとかいう物質を地下鉄に撒いたでしょう。日本でそんな事件がありましたよね。」
 「サハリンではなくサリンですけど」

※ 「蚊取り線香」の翌日談である。ついでながらこの事件のおかげで、E君と僕の誕生日は日本犯罪史に末永く記憶されることになった。

***

【27面】 元裁判長と約束の腕時計
 「法の名において生命を奪うようなことはしない。被告はその全存在をかけて罪を償ってほしい」
 2人の人生が再び交わるのは、石丸さんの退官3年後の92年。吉野受刑者の両親を介して聖書の贈呈を受けたのが始まりだ。その後毎年、クリスマスカードや年賀状が届いた。2000年前後から、石丸さんは仮釈放を祈るという内容のカードを送るようになった。

※ 石丸俊彦氏(1924-2007)は東京地裁判事(当時)として「あさま山荘事件」をめぐる吉野雅邦受刑者の一審裁判長を務めた。ただし尊名に接したのはこのことによるのではなく、日本基督教団信徒会長としてである。氏名の類似から「御親族ですか?」と聞かれることが時々あったが、残念ながらそうではない。石丸姓は愛媛と佐賀に多く、氏は佐賀の御出身ではないかと拝察する。
 何とも恥ずかしいことに、今日この記事を読むまで氏がこのような人物であることを知らなかった。吉田満氏といい石丸俊彦氏といい、その世代の信徒には実に立派な人びとがいた。

朝日新聞デジタル (asahi.com) 

***

 もう一つ、今日の紙面にきっと載るはずの事件を探して、珍しくも朝から新聞をめくったのである。
 ない?まさか…
 昨日午後、閑静な住宅街の急な坂道をパトカー数台が封鎖し、近隣を騒然とさせた奇怪な事件。カメラの角度そのままに、駅へ向かうこの道を進もうとして制され、左へ迂回したのがまさに午後1時30分前後。通り沿いに住む知人らの、心の平和が案じられる。


Ω