そのような理由から、雪国のこの日は、子供達が気候の良い時期に通常の外遊びに出るという、その年の最初のⅠページになるのでした。少しでも道理が分かる子なら、この日にさも嬉しさで浮き立たないという北国の子供がいるでしょうか?
今日この日は、そういった一年の中でも子供達にとって特に記念すべき日になるのでした。
さて、雪が溶けて間もない土がむき出しになった地面には、殆ど緑など見えないのですが、地面に張り付くようにして冬を越した小さな植物が幾つか存在しているのは確かでした。それらの植物はロゼット状になって冬を越しているのです。それらは変色したり汚れているのでとても緑には見えないのです。年間通してよく目にするオオバコはまだ伸びていません。クローバーの姿も何処にも見えません。それと分からないほどに小さく縮こまっているか、まだ地中の根だけであったりしているのです。 いの一番にこれらのよく遊びに使われる植物を探していた年長者は大抵呟きます。
「無いなぁ、よくある草なのに。…」
そして残念そうに年少者達に目をやると、思いつくままに他の遊びを指導し始めます。
それは大抵は運動系の遊びです。道の端の側溝を飛び越すとか、落ちていた板の上をはみ出さずに歩くというような遊びです。石を積んだり地面に絵を描くというような室内遊びの延長のような遊びには、さも飽きたと言うように、目に見えての不平不満を漏らす者もいます。手の掛かる幼子に、年長者にしても何時迄も年下を構っている気はなく、呼びに来た同年代の仲間や、又は自らその仲間を探すべく早々に年少者達をその場において立ち去って行きます。
大将が去り、幼い同格の仲間だけが残ると、皆おもいおもいに教えられた遊びに取り組み始めるのですが、まだ寒さの名残でしょうか、縮こまっている体では側溝に落ちて怪我をして泣き出す者、ぬかるみで滑って、怪我をしないまでも衣類を汚してその冷たさに泣き濡れる者、と、ここで皆は大抵すぐに一旦帰宅する事になるのでした。