『あの様子では、やはり小手川君は私に気を使って社交辞令としてお愛想を言っていたのね。松山君が近くにいると思ってなかったんだわ。気苦労ねぇ。』
野原さんは自分の予想が正しかった事を知るのでした。『それにしても松山君て…』、彼女は松山君が一体どんな人物なのだろうと改めて不思議に思うのでした。
『私達が単なる同僚同士だという事ぐらい分かっていそうなものなのに。私が同じフロアにいる事にも気付いているはずなのに…。』
「変な人。」
野原さんは小首をかしげながら独り言のように呟くのでした。
「何だよ、話は済んだんだろう。」
自分の家にやって来た小手川君の顔を見て松山君は言いました。松山君にすると、何故また小手川君が自分に話をしに来たのか分からないのでした。
「今のはお前がいないと思って喋っていたんだよ。」
聞き流して置いてくれてよかったんだ。小手川君ぼそぼそとそんな事を喋っています。
「まだ決めたわけじゃないんだ。入社当時から、彼女が僕を好きそうな素振りだったから誘って来たんだよ。」
据え膳って言うだろう、一応気のある素振りぐらいしておいてもこっちに損はないからね。そう言う小手川君に、なんだ、その他大勢なのか、と拍子抜けする松山君なのでした。
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