防波堤は旅行社のデスクのあるホテル近くにありました。道を歩いているとすぐに目についたので、私は予定していた海岸への道では無く、気持ちを変えて、その防波堤に向かってすぐに海へと向かいました。防波堤までは距離にして10メートルも無かったと思います。
私は防波堤に着いて、その向こうに美しいケアンズの夏の海原が広がっている事を期待すると、それっと爽やかな笑顔で海面を覗き込みました。そして直ぐにがっくりと頭を落とし、防波堤に両手を着きました。防波堤の向こうにはどろどろとした泥が、10、15、事によると20メートル以上も広がっていました。海と思しき水色はかなり向こうにあり、防波堤の下は水中を覗き込むことなどできない泥土の状態でした。
『そうか、干潮という物が有る海なのね。』もしくは何時もこのような状態なのかもしれない。そう思うと日本海育ちで干潟を見たことのない私は、国以前に土地の海岸線の違いを感じてがっくりと肩を落としてしまいました。
しかし、直ぐに、こんな事で負けてどうする!と、気分を奮い立たせました。まだ見たことのない干潟という物を生れて初めて目に出来たのだから、嬉しい初体験が1つ出来たと思おうじゃないか、これこそが私にとっての未曽有の体験というものだわと、笑って決意しました。
これも世にある1つの光景だ。と生まれて初めて見たケアンズの干潟を鑑賞することにしました。そして、直ぐに『美しくない』と、泥の干潟に飽きてしまいました。それでも、干潟自体初めて見る物なのだからと、再度挑戦して観察してみるのでした。何か興味を惹かれる物が有るかもしれません。
私が見詰めた泥の表面には生物と思しき物は全く目に付かず、干潟には沖に向かう人の足跡などあったかもしれません、が、見詰め直してもやはり泥だけの世界です。私は干潟に降り立つ気分にはならず、沈み込むかもしれないと思ったのです、世の中には泥沼という物が有りますからね、もう少しの間努力して観察していましたが、程無くして、そのまま防波堤に沿って商店の方へ向かうことにしました。
私は地図を広げて歩き出しました。私が向かっていた方向は最初に決めておいた自分の散策コースの方向でした。
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