私は病気になると、大抵は風邪でしたが、処方されるお薬に粉薬が多かった時期がありました。
幼い頃はシロップ入りの飲み薬でしたが、ある程度の大きさになると粉薬に変わったのです。
シロップ瓶では処方量が入り切らなくなる頃だったのでしょう。
ところが、粉薬の苦い事、『良薬口に苦し
』と言われても、子供には全く飲みたい物ではありません。
それで、嫌がっていた私に、祖母が自分の薬を包んでいたオブラートを貸してくれました。
こうやって包んで、と、口に入れて水で飲む
、と、飲ませてくれました。
口中に粉薬が溢れて苦く咽るという事無しにすっきりとお薬が飲めます。
私は一発でオブラートのフアン
になりました。
早速、祖母は母に言って、薬屋さんで私の分も購入するよう指示しました。
そして、オブラートの効用についてにこにこして話してくれるのでした。
「オブラートというのは便利な物だ。こんな苦いお薬を包んで苦くなく飲み込ませてくれる。
」
そして、幼い私の顔をしげしげと見て、
「お前も、これから人生で嫌な事、苦々しい事に出会うだろうから、…」
と、必ず粉薬のように苦々しい嫌な事に出会うと言い、それは必ず飲み込まなければいけないお薬のような物だ
、
そんな時にこのオブラートのような包みこんでくれる物があれば、嫌な思いをせずに済むのに、
人生にオブラートって無いからねぇ。
と、考え込んでいました。
私は、そんな粉薬のように苦い嫌な物が
私の人生に必ず待ち構えている
と思うと、とても嫌で
しかめっ面をしたものです。
それ程に、当時の粉薬の苦さは子供の口に格別な不快感をもたらしていました。
苦いだけでなく咽るという現象も、これから薬を飲むという時に、恐怖
に似た嫌悪感を私にもたらすのでした。
よく、(薬を)さあ飲むぞ!
、と気持ちが定まるまでは、
もうちょっと待って、とか、今はいい(嫌)
、と言って、嫌々
をして口を開けなかったものです。
人生にオブラートか、想像もつかない出来事
とそれを阻止するスーパーマンのようなオブラート
、
私も祖母の横で夢想してみるのでした。
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