Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

蝶ちょう(7)

2018-12-23 11:15:03 | 日記

 「いいわ、私が証人だから。ちゃんと捕まえるところを見ていたんだから。」

私はその子がそう言う言葉を夢の向こうの言葉の様に聞きながら、ぼーっとして何事も無げに只微笑んでいました。

 もう帰ろうと言われて、帰途についた私は宙を歩くように上の空で浮き浮きとしていました。そして暗くなりかけている何時もの帰り道を家へと急いでいたのですが、ふわふわとして覚束ない私の足取りは、ついついその時の連れから遅れがちになるのでした。そんな私に先を歩いていた連れは痺れを切らし、遅くなるからと遂には私を1人その場に残し、先に道を駆けて行ってしまったのでした。

 1人になった私は返って気分的には落ち着いたのですが、落ち着いてみると手足は酷く重くなり、思うように歩く事が出来ないでいました。そんな自分が自分で不思議に思われたくらいです。焦れば焦る程、にっちもさっちもと言う具合でした。遂には立ち止まって1歩も歩けなくなってしまいました、私は困りました。日も暮れて行き暗さは益々増して来ます。私は途方に暮れたと言ってよいでしょう。

 「大丈夫か?こんな所で何をしているんだ。」

私がふと気が付くと、目の前には父の顔があり私の顔を覗き込むようにして語り掛けていました。父は何時来たのだろうかと私は訝りました。眼前の家に続く道は1本道だったのですが、父がこちらへ来る様子に私は全然気付か無かったのです。

「お前あの子の蝶を取ったんだって」

いけないなぁと、父は私には訳の分からない事を言い出しました。


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