Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

親交 38

2019-04-18 13:53:52 | 日記

 図書館で、紫苑さんはにこやかに検索カードを繰ると、お目当ての本を探し出しました。彼は遅れてやって来た鷹夫にその本を手渡すと彼の恋の道標にするとよいよと推薦しました。かつて青年時代に自分が辿った道です、彼にも良い結果が待ち受けている様にと切に願う紫苑さんでした。

 「僕が彼女の父親役をしてあげるから。」

彼女の家に対しての交際申し込みの草稿が出来たら、自分が試役になって講評してあげよう。そういう紫苑さんでした。これに対して、鷹雄の方も何ら異存は有りませんでした。それで嬉しく紫苑さんの推薦した本を手にその申し出を受けました。

 その日2人は軽く雑談などして、図書館の帰りにカフェによると一服し、それではねと手を振って分かれたのでした。

 さてさてと、船内に戻ってきたミルは早速紫苑さんから勧めれた本に目を通し始めました。副長の催促もあり、事を急ごうと考えています。本を読みながら成程、成程と頷くミルです。よしこれなら何とか早急に彼女の家に対する交際申し込みの方の草稿は纏まりそうだと目途を立てました。

 「こっちの草稿は出来そうだけど…。」

ミルは考えました。彼女に出会ってから早1年近くになる。その間彼女とは何の関わり合いも持ってこなかった自分が、行き成り彼女にどうやって会えばよいのだろうかと考えると、さっぱり名案が浮かんで来ない彼なのでした。

 ミルは物思いに沈みながら1人宇宙船の通路を歩いていました。沈み込んだ彼は窓から見える果てしない宇宙空間の深淵の淵にその儘どっぷりと沈み込んでしまいそうでした。すると、そんな彼の行き詰った雰囲気を察知したのかしないのか、例によって副長のチルが、如何にものほほんとした風情で単身反対側から遣って来ました。彼はミルを見るとやぁという感じで彼に近寄ると、

「ミル、丁度探していたんだ。」

と声を掛けて来ました。


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