さて、住職さんが奥様と細かな打ち合わせをして戻ってみると、
座敷には蛍さん一家以外では、伯父一家とあと2、3人の親戚が残るのみとなっていました。
本当は蛍さん一家と伯父の一家だけになるところでしたが、伯母が襖の向こうで面白いと吹聴したおかげで、
後から戻って来た者が2、3人いたのでした。何となく怖い物見たさで武者震いなどして、後ろで控えて微笑んでいます。
トイレに行った伯母が戻って来ると、襖の前に先程帰った伯父が待っていました。にっこりと微笑んで、
「ははは、いや、あんたさんね、家のに何でも吹き込んでもらっては困るねぇ。」
と、穏やかに話しを始めます。伯母の方はあら、それは申し訳の無い事でと神妙に答えます。
「あれはほら、お嬢さん育ちでしょう、疑うという事を知らない人だから、人に言われた事は皆本当と思ってしまうだろう。」
まぁ、そうなんですか、それはそれは。と伯母。家のが面白いと酷く笑って言うものですから、これはそうなのかと思いまして。
「あれが、そうか。」と、伯父は酷く渋い顔になります。うーむと、困ったねと言ったっ切り、伯父は言い淀んでいます。
「如何かされましたか?あなた様も家のとは違って見られた事が無いのでしょう。面白いそうですよ。」
伯母は微笑んで伯父に言います。
「…、」
無言で如何しようかと迷っていた伯父は、やはり言った方がよいかとここで口を開けるのでした。
「如何しようかと迷っていたんだがねぇ、言った方がいいかとも思ってね。」
実はと、前回の除霊の時には自分も居てね、さっきも座敷で自分は言っただろう、あんたさんにも聞こえていたと思うんだがなぁ、
「一旦除霊された霊が別の人間に憑りついてね。」
まぁ、誰に?と、真剣身を帯びた声で伯母。誰というか、うーん。と再び言い淀む伯父。
「そこまでお言いになったんですから、言ってください。ズバッと。」
ズバッと言っていただいて結構です、別に驚きませんから。と、何だかきつい事い方に変わった伯母に、
伯父は元気なく目を伏せて、しかし内心の可笑しさを抑えながら、
「いや、その言い様ならあなたも多分わかっていると思うが、」
伯父の様子とこの言葉に、ここ迄来たら伯母にも分かります。今までのもしかしたらの彼女の思いが確信に変わったのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます