住職さんは座敷に戻って来ました。
「皆さん、1つ問題が発生しました。」
住職さんの言葉に、座敷の中は皆一様に何事かと騒めき、中には、問題ならもう既に1つありますよ、という者もありました。
「確かに、今までの問題は本家の孫娘さんが、跡継ぎの息子さんの実子かどうかでした。」
が、討議の最中に全く新しい問題が発生しました。住職さんの言葉に皆一様に驚き興味を抱きます。
ホーっ、それはどんな問題ですか。早く聞かせてください。等々上がる声に、室内のざわつきを押し鎮めながら、
住職さんは厳かに言います。
「一寸話題のお孫さんの様子に注目してみてください。」
住職さんの言葉に、皆話すのをピタリと静めて、祖母に抱かれてその膝の上で寛ぐ蛍さんを注目します。
室内の暫しの沈黙の後、さわさわと耳打ちしたり、ぼそぼそと小声で話す者も出て来るようになると、
皆の口々に思い思いの感想が上ってきます。
あれ?という者もあれば、別に普通じゃないか、という者もあり、変だという者もあれば、
この子は何時もこうだという者もいます。
しかし、段々と座敷の中の声は1つに纏められ、やはりこの子は普段と違って何か変だ、何だか妙だという事になりました。
それで、「もし変だとしたらどうだと言うんです。」と誰かが住職さんに質問しました。
「皆さん、何故本家のお孫さんが変なのか理由の分かる方はおられますか?」
住職さんは問いかけます。お分りの方はどうぞ、忌憚の無い意見をお聞かせください。
こう住職さんに言われて、ホーちゃん普段から変だから、と親戚の子が面白そうに言うと、
皆、はははは、くすくすと笑い声が漏れ、それまで何となく緊張していた場は一様に和むのでした。
住職さんも、これはこれはと笑いながら、普段からそんな事もおありなのかもしれませんが、
今は本当にこのお子さんは何かおかしくないですか?と仰います。妙でしょうと。
そう言われてみればと、皆がもう1度蛍さんに注目します。ふっと静かになった座敷の中に、突如蛍さんの笑い声が響きます。
「けけけけけ、キャラキャラ…、ひひひひひ」と、如何にも異様な笑い声が響きました。
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