「…ちゃん、どれだけここにいたと思う?」
そう思い付いた様に、私の名前を呼びながらお姉さんが聞いて来るので、私は、彼女がすぐに戻って来たのだからそのくらいの短い時間よ、と答えるのでした。そしてちょっと意地悪そうに、「…ちゃん、帰ったんじゃなかったの?」とお姉さんの名前を言いながら聞くのでした。それから私は彼女に虚勢を張ってみせようと、「私は此処で一人でも平気よ、…ちゃん、帰ったら。」等とぷんとして言うのでした。
お姉さんは拍子抜けしたように「帰ったんだけど。」と、…家には1度帰って、私が如何したのかと私の母に聞かれて、それで私を捜しにまた此処へ来たのだけれど…という様な事を、淡々と微笑しながら、誰に言うでも無いという雰囲気で私に答えてくれました。
お姉さんは捜しに出た迷子のご近所さんに気辛く感じ、その子の問い掛けに答えながら考えていました。『私が帰った後、あの子そのまま此処にいたんだ。さっきと同じような場所にいるから、ずーっと此処で1人でいたんだろうか?静かだから此処の周りにも誰もいないみたいだし、此処へ来る途中にも誰も見なかったから、此処の施設の中にも誰もいないみたいだった。本当にこの中で、この場所で、あの子1人でいたんだ。ならこんな場所で何してたんだろう。』そんな疑問が湧いて来たのでした。そこで彼女は屈み込んでいるご近所の女の子に聞いてみる事にしました。
「此処で何してたの?」
私の方を見て再びお姉さんが話掛けて来ます。私はそれは決まった事だとばかりに真顔でお姉さんを見詰めると、「土筆のことよ。」と答えました。土筆?の事?と怪訝そうにお姉さんの方は聞き返します。何しろ私の答えは答えになっていないのですから当たり前です。此処で土筆を取っていたのかと聞かれます。
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