そして、この時の彼にはもう1つ、グループの仲間の1人から頼まれていた役目がありました。こっちの方は年下の子から頼まれたので、話を受けた時には新リーダーの顔としてキップよく気楽に引き受けたのですが、今になるとこちらの方も何だか気が重くなって来てしまいました。
ふと気になり頼まれたその子を見てみます。思わず目が合うと、その子は真剣な眼差しでこちらを見ています。自分が頼んだことをリーダーは何時言ってくれるのだろうというような、きりっとした訴える目つきです。その自分を頼り切ったあどけない真顔の顔を見ると、新リーダーは再びリーダーとしての自信を取り戻しました。
そっとズボンのポケットの中のキャラメルのオマケに触れてみます。ポケットの布の上から手でその塊を撫でてみます。手に伝わる感触にこれはこれで欲しかったけど…。欲しい物を手に入れたという嬉しい気持ちの反面、頼まれるんじゃなかったという後悔も湧くのでした。それにしても、頭になって何かを人に教えるという事は、酷く気疲れするものだなと、胸にしみじみとした悲哀のような物を感じるのでした。自分がリーダーになった事を後悔し、又、その確りしなければいけないリーダーが、年下に物で買収されたようで、気恥ずかしい後ろめたい気分も重なって後悔の念に追いすがって来るのでした。
『ま、頼まれた事は頼まれた事だから。』、彼は武士に二言は無いと内心呟くと、一旦引き受けた約束を果たそうと徐に立ち上がると元気よく
「じゃあ、今日はこの辺で解散!」
そう皆に声をかけて、仲間がわーいと思い思いの方向へ一散に駆け出していくと、年下の頼み事を引き受けた子に目配せして頷き、未だ駆け出さずに立ち上がったままで周りの様子を見ていた、年少の物慣れない1人の女の子を呼び止めるのでした。彼は女の子が佇んでいる傍に行くと、愛想よく笑いました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます