「やーめた。」
『誰のせいで仲良しのあの子と喧嘩する事になったんだか。私が、物の分かったこの私が、仲のいい、親友のあの子と揉める事になったのは、元はと言えばあんたのせいだろう。』彼女は年下の従妹を睨みながら思いました。が、彼女は直ぐににこやかに微笑んで見せました。目の前で物調面して頬を膨らませている年下の従姉妹の顔が、全くの「おかめ」その物の様で、そんな不器量な子の為に、器量よしの自分がぷりぷり怒るなんて…、と自分の血相を変えることが如何にも馬鹿々々しい事に思えたからでした。
「何で私がライバルの為に骨を折らないといけないんだか。」
親友の為だったとしても…。彼女は年下の、恋敵の従姉妹の前でそう呟いてみせました。そして、フフフと笑います。こう目の前で言ってみても、年下の彼女には物事が全然分からないという事を、彼女はちゃんと見抜いていました。
「…ちゃん、ひょっとこに、似た顔してる。」
彼女は敢えて膨れっ面をした従姉妹の顔に似ている「おかめ」の名を出さず、その相棒の「ひょっとこ」の名を出してみせたのでした。それはまだ未熟な従姉妹に対する彼女なりの皮肉でした。相方の名前からそのもう一方の相手の名前を連想し、暗に言われなかった方を指してそちらに似ていると言われたのだと、隠れた意味を察する能力が未だあなたには備わっていない、自分の方はもうそれが出来るのだという余裕を見せたのでした。
確かに、年下の彼女はまだそんな言葉の使い方に出会った事が無く、ましてやその先を行く言葉の使い方など到底考え合わせた事も無く、それは全くの及びも着かない世界という物でした。年端の行かない彼女には、1つの言葉から連想してその先を読むという、雰囲気に合わせて使われる様な決め言葉、その言葉をカモフラージュにしてその先に含まれた、隠された意味、隠喩のような物を判読するという能力は全然備わっていませんでした。
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