私の心の中の約束箱はというと、空だけに最初それは真っ新な白い色をしており、プレゼントボックスの様な軽い紙箱風のイメージでした。その白さと軽量感が、如何にも私は清廉潔白だと自身に訴えているように感じられ、恰も当時自ら考える自分という為人を表しているかのようで、将に私の心情にぴったりと叶っていました。
しかしその内、私が親戚の子と話を深めて行くに連れ、彼等が約束したのだとしばしば口にして、その都度真剣になって行く彼等の顔色を観察するに連れ、これはもしかすると、私の方がその事をすっかり忘れているのだろうか?、と、その頃私がよく聞いた『忘却の彼方に…』という言葉を頭に思い浮かべてみるのでした。私は遥かに記憶の先のそのまた先を飛ぶように急ぎ眺めやってみるのでした。
…そして、やはり何も、私の脳裏には何の映像も浮かんでは来ないのでした。そうすると、
『私の方が悪いのだろうか?。』
こうやって自分の方の落ち度ではないかと考え出すと、私の心の内の箱の内部は灰色にくすんで来るのでした。そこで次に私は、
『それでは自分の方では約束を果たしているのだろうか?』
という疑問が浮かんできました。
「私は、約束を忘れているくらいだから、私の方も約束を果たしていないわねえ。」
思わず口に出してこの様な事を私は言うのでした。すると親戚の子は、
「ううん、さっちゃんは出来たんだ。」
私の方は約束を果たしていると言うのです。
「さっちゃんは達成したんだけど…。」
自分達は出来なかったから、という言葉に、空かさず私は「達成?」と訝るのでした。
「達成するような約束事なの?。」
そう彼等に尋ねてみました。すると相手は何やらモニョモニョと言葉や態度が急に曖昧になりました。『これは怪しいわね。』私は思いました。やはり私は彼等に担がれているのではないかと感じたのです。
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