ショパンコンクールを狙いに行かなかったところがすごい。
2月22日
ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル
ヤマハホール
プログラム)
J.S.バッハ/パルティータ 第6番 ホ短調 BWV 830
K.シマノフスキ/20のマズルカ Op.50より
モデラート Op.50-3
ポコ ヴィヴァーチェ-テンポ オベルカ Op.50-7
モデラート Op.50-5
アレグラメンテ、リゾルートOp.50-4
A.ヴェーベルン/ピアノのための変奏曲 Op.27
L.v.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調Op.110
バッハでないような衝撃的はバッハ。初めてアンデルシェフスキーを聴いたときが甦るような
演奏でした。当初の予定のフランス風序曲からの変更プログラムで、最初の方はちょっと気になる
タッチもありましたが、曲の流れがすごいのです。
シマノフスキはN響のコンサートのアンコールでも弾いた曲が1曲目でした。ヤマハホールは狭いので
音が大きく、広がるというのと違うので前回とは違ったイメージでした。民族的な躍動感がある
曲でした。
でも圧巻はベートーヴェン。このために直前にヴェーヴェルンを持ってきたのですね。間髪を入れないで
ベートーヴェンの調和の世界に入って行きました。 現代音楽は今までの音楽を壊した上に成り立っているような
現代の不安と怒りをあらわしているような曲で、私はあまり得意ではないのですが、これもありかなと思いました。
そのあとのベートーヴェンの調和のとれた平和な美しいハーモニー。最初から引き付けられました。
すべてが美しく響きました。ベートーヴェンのやさしさがアンデルシェフスキーを通して溢れました。静かな会場が
さらに静まったように聴いている人たちの心もはりつめて一つになりました。生演奏の時に起きる不思議な一体感です。
今まで聴いた中で一番美しいベートーヴェンの31番でした。音楽の中に希望の光が立ち登るのを感じました。
音楽を聴きながら浮かんだのは友達と見た熊野の海です。私たちは海を見ながら、自分の心を見ていたことに
気が付きました。
すべて神の御心に任せてという「バベットの晩餐会」のラストシーンも思い出していました。自分の意志なんて
小さなものです。「しかし、人生の選択などに意味はない。いずれ選んだ物も、拒んだ物も神から与えられる。
その時を心静かに待てば良い。捨てた物も照り戻せる」という将軍の言葉を思い出しました。
アンコールも止まず、最後はまたバッハで締めました。平均律クラーヴィアの聴きなれた曲もありました。
音はますます冴えわたって行きました。
スタンバイされていたアンデルシェフスキさん。終演直後、SNS用に写真撮影をお願いしたところ、
「きっと、おもしろいかも?」と、ミトン姿をまた披露くださいました!
まだ静かな銀座。それでも外国人観光客の姿がちらほら見え始めました。
ヤマハの1階。リニューアルしていたのですね。
音楽に包まれて帰り道につく。銀座が人が少なくて美しく感じられました。
Piotr Anderszewski plays Bach Partita No.6 in e minor BWV830
Feb. 22 2023 Ginza