11月1日
ブルックナーのような音楽がずっと流れるヴィスコンティを思い出させる暗い映画でした。SFでちょっと内容や人間関係を
把握するのが難しくわかりずらいところもある映画でした。見に行きたくなったのはロミー・シュナイダーの晩年に近い
映画であったことと、監督が「田舎の日曜日」のタヴェルニエだったからです。
やっている期間と回数が少なかったのであまり見るチャンスはないと思っていたのですが、
今日午前中に配達予定の宅急便が早く届いたので、家を飛び出して渋谷まで見に行きました。
SFと言えばタルコフスキーの「惑星ソラリス」やカズオ・イシグロ原作の「私をはなさないで」くらいしか
見たことはないのですが・・・
この44年前に作られた映画はSFと言っても問題はそこではなく、現代の今まさに問題になっているマスメディアの
ことだと思いました。同じ意見のコメントをみつけたのでピックアップしました。
・「死ぬこと」をめぐる物語であり、人間の尊厳がテーマになる。
・ 感動と不安が交錯するこのカルト的名作は、のぞき見好きの衰退社会をぞっとするほど予見的なビジョンである。
・ メディアが「ビッグスクープ」を追求する上でどれほど悪質であるかについて非常に予言的に思える、美しくて
悲劇的なSF小説。
・ メディア報道に関連する倫理的および道徳的な問題を扱っています。
・ マスメディアに対する痛烈な批判的メッセージを感じる。
視聴率の獲得の為、報道の自由等を盾とし時に度を越した演出をも厭わない。
近未来を描いたSFではあるが、いつの時代にも通じる普遍的な社会的問題を描いたものになっている。
『デス・ウォッチ』
※旧タイトル『SFデス・ブロードキャスト』 (1980)
- 原題 La mort en direct
西ドイツ=イギリス=フランス
監督 ベルトラン・タヴェルニエ - 共演 ハーヴェイ・カイテル、ハリー・ディーン・スタントン、マックス・フォン・シドー
撮影 ピエール=ウィリアム・グレン
音楽 アントワーヌ・デュアメル
ベルトラン・タヴェルニエ監督の『デス・ウォッチ』は、人間ドラマとSFの教訓を織り交ぜた作品で、病死が極めて稀に
なった未来を舞台に展開する。キャサリン(ロミー・シュナイダー)が不治の病にかかっていることが判明すると、
彼女はメディアの強い関心の対象となり、ロディ(ハーヴェイ・カイテル)は、キャサリンに内緒でリアリティ番組
『デス・ウォッチ』のために彼女の最期の日々を録画するため、脳にカメラを埋め込む。
ロミー・シュナイダーの生きていることをいとおしむような演技が素晴らしく、この2年後自殺とも思われる睡眠薬の過剰摂取に
より子供の後を追うように亡くなったことを思い出させました。
ヴィスコンティの「ルードリッヒ」でエリザベートを演じていましたが、りりしくてすてきでした。
この映画でも死にゆく者のプライバシーと尊厳をかけて孤独に戦う役を演じるロミー・シュナイダーのその人生との重なる部分を
感じずにはいられませんでした。
映画では別れた元夫に死ぬ前に会いに行くところに救いがありました。マックス・フォン・シドーいいですね。
ロディも最後に自分のしていることに耐えられなくなり、失明してしまいます。良心が見えるシーンです。
監督のコメントも面白かったです。、
「クロード・ソーテはロミーをモーツァルトの音楽に喩え捧げている。私はむしろヴェルディやマーラーを思い起こす」
──『デス・ウォッチ』監督 ベルトラン・タヴェルニエ
「役柄を構築するイザベル・アジャーニみたいな女優とは正反対に、ロミーは役を生きていた。まっすぐな人だった。」
──『最も重要なものは愛』監督 アンジェイ・ズラウスキー
イザベル・アジャーニの映画は1年くらい前、「アデルの恋」と「カミーユ・クローデル」を何回も見ました。すごい演技力で
メリル・ストリープやケイト・ブランシェットと同じように注目の女優です。
ロミー・シュナイダーの映画は「離愁」「サンスーシの女」「ルードリッヒ」を見に行ったくらいですが、好きな女優さんでした。
亡くなったのは43歳だったのですね。ネットで見ていたら葬儀やお墓のことは最初の恋人だったアラン・ドロンが手配した
とのこと。しかしマスコミを避けて葬儀には参列しなかったとか。アラン・ドロンも最近他界して、こんな伝説的なことが
あったなんてまるでこの映画のようです。
原作についても
The Unsleeping Eye is a 1974 science fiction novel by British writer David G. Compton. It was published in the United Kingdom
as The Continuous Katherine Mortenhoe in 1974 and was filmed by Bertrand Tavernier in 1980 as Death Watch, starring
Harvey Keitel, Romy Schneider and Max von Sydow. Subsequent editions of the novel were published as Death Watch.
予告で「愛と哀しみのボレロ」をやっていたのですが、映画の冒頭に流れるWilla Catherの文がすごかった。
Catherは学生時代、授業でもやったし、全作品をみんなで読んで発表したこともあった、日本ではあまりポピュラーで
ない作家です。
"There are only two or three human stories and they go on repeating themselves as fiercely as if they had never happened before."
- Willa Cather (1873- 1947) O Pioneers!
人生には2つか3つの物語しかない
しかしそれは何度も繰り返される
その度ごとに初めてのような残酷さで
「愛と哀しみボレロ」はジョルジョ・ドンの舞台を見たあとで早稲田松竹に見に行ったことがありました。
再びやるようなのでまた見たくなりました。
私もニュースレターを見るまで知りませんでした。
クールな美しさでしたね。離愁はその頃、ジャン・ルイ・トランティニアンも好きだったので見に行きました。
ルルーシュとかのあの映画の時代も懐かしく思い出しています。古い映画を見たくなってしまいました。