碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(3)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


●日本テレビ「スッキリ!!」

(午前中の情報番組で)依然好調なのが「とくダネ!!」(フジ)だ。視聴率7・8%と、他局の改編の動きの影響を一切受けず、首位をキープし続けている。

(中略)

同様に固定ファンをつかんで安定した人気を誇るのが「スッキリ!!」(日テレ)だ。今回でテリー伊藤と勝谷誠彦というアクの強い出演者2人を卒業させて、上重聡アナを司会に抜擢した。

さわやかに再スタートした初回の視聴率7・2%と好調。しかし、その直後に「週刊文春」が上重アナの有力スポンサーからの利益供与疑惑が報じ、別の意味で注目を集めてしまった。マンションの購入資金として「1億7千万円」の融資を無利子で受けたと報道され、庶民感覚を軸にする情報番組の顔としては致命傷を負ったのだ。

重しが抜けてスッキリしすぎ

「フリーになった羽鳥慎一アナの後継として看板アナに育てるはずが、まさかの事態。社内はかなり冷ややかです」(日テレ関係者)

アナウンサーには清廉性が求められるからと、銀座でホステス経験があった女子大生の内定取り消し騒動を起こした日テレだけに、分が悪かった。上重アナは番組内で釈明、頭を下げた後も出演しているが、どこかやりにくそうに映る。

むしろ、加藤浩次が折に触れて「今、イメージ上げようと必死な時期だもんな」などと際どいツッコミを入れるのが話題になっている。

「上重アナは直球の元気さが売りなのに、すっかり精彩を欠き、暗いオーラが漂う。ピリ辛コメントを連発するテリー伊藤と勝谷が何を言うかわからないのが面白い番組だったから、2人が不在になった今、一層その価値が浮き彫りになってしまった。重しが抜けてスッキリしすぎ、軽すぎなんです」(碓井教授)

既存の番組が強さを見せる一方、意外に注目なのが「みんなのニュース」(フジ・15時50分~)だ。情報番組やバラエティで活躍するエース・伊藤利尋アナが、報道番組のメーンキャスターに初挑戦中だ。

(中略)

各局が春の改編改革に乗り出したものの、やはり根強い人気は宮根、小倉に加え、エース伊藤で決まりなのか――。

だが碓井教授は、番組の真価が問われるのはこの先だという。

「あるコーナーから番組人気に火がつくこともありえる。いざ何かが起きた時に視聴者は生中継の安藤と宮根のどちらを選ぶのか、その勝負は楽しみです」


(週刊朝日 2015年4月24日号より)




週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(2)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


飛躍!迷走?春の情報番組改編


●TBS「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」、「白熱ライブ ビビット」

年度の変わる4月。今年もテレビの番組改編が行われた。しかし、そこでコケたのがTBSだ。独走状態の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系・午後1時55分~)に対抗しようとするも専門家からは、辛口評価が並ぶ。

東海地方が拠点の中部日本放送(CBC)で生放送されていた情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(午後1時55分~)を全国区に迎え入れたのだ。2008年に「ミヤネ屋」が大阪・読売テレビから全国に躍り出て人気を博したように、二匹目のドジョウを狙ったとも考えられる。

番組名だけ見ると「スマップ関連?」と勘違いしかけるが、スマップは無関係。MCを務めるのは全国では知名度が低いCBC石井亮次アナ。初回視聴率は2.9%だった。

テレビコラムの連載を持つライターの吉田潮氏は手厳しい。

「無難すぎて特筆すべきものが1ミリもない。テレビショッピングの延長線上のような印象ですね」

上智大の碓井広義教授(メディア論)は、

「てっきりTBSは大阪の毎日放送から番組を持ってくると思っていたら名古屋だった。なんなら次は福岡のRKB毎日放送など、半年ごとに地方を変えるほうがまだおもしろいのでは。宮根さんのような強烈な『顔』がいないと難しいでしょう」


この3月に終了した「いっぷく!」の後継として引き続き司会を務める国分太一と共に、女優の真矢ミキを抜擢したのが「白熱ライブ ビビット」(TBS系・午前8時~)。

初回視聴率は3.0%だったが、何より強烈なインパクトを与えたのは“紫”が基調のスタジオセットだ。テレビ局関係者は「紫は欲求不満の色なんて言われますし、通常、深夜番組でしか見ない。それを朝の情報番組にもってくるとは」と驚く。前出の吉田氏が言う。

「真矢のアップが多すぎ。彼女が奇麗なのはわかるが、アレルギー成分で問題になった石けんCMの『あきらめないで!』という“迷セリフ”が今にも聞こえてきそうです」

真矢の起用については、碓井教授も首をひねる。

「放送開始から1週間以上が経ったのに、ほとんど印象がない。局は国分の横で“しっかりもののお姉さん”的な役割を求めたかもしれないが、『次は○○』とコーナーのつなぎだけ。元宝塚スターに失礼な気がします」


ただし2人の脇で、黒縁メガネで進行する井上貴博アナを評価する声がある。

「みのもんたが降板した後の『朝ズバッ!』の後任として、若手ながらものすごい重圧の中で番組を回していた器用さを今後生かしたいところ」(TBS社員)

(週刊朝日 2015年4月24日号より)

週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(1)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


飛躍!迷走?春の情報番組改編


●フジテレビ「直撃LIVE グッディ!」

この春の番組改編で、年間視聴率3位に沈むフジテレビが仕掛けている。社運を賭けて切り崩しを狙うのは、昨年の年間視聴率三冠王である日本テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」(午後1時55分~)だ。

フジが今回、最も力を入れたのが“曰く付き”とされる午後の時間帯の変革だ。2012年からの「知りたがり!」は1年で終了、13年からの「アゲるテレビ」も半年で打ち切りと、情報番組は苦戦から抜け出せずにいる。

起死回生を狙ったのが、15年も報道番組「スーパーニュース」のメインキャスターとして君臨した“女王”安藤優子と、バラエティー「トリビアの泉」でMC経験がある俳優の高橋克実を情報番組「直撃LIVE グッディ!」(午後1時55分~)の進行役に起用したこと。

終了後に続けて放送される報道番組「みんなのニュース」(午後3時50分~)と合わせた5時間を生放送に切り替えた。その背景には、独走状態の「ミヤネ屋」の存在があった。

「ミヤネ屋」は近年、午後の時間帯では唯一の生放送枠として、注目を集めた記者会見や事件を独占して報じてきた。その高視聴率番組にフジが果敢にも挑んだ、まさに「社運を賭けた勝負」なのだ。フジ社員が解説する。

「上層部は『グッディ!』では特に芸能ネタの強化をはかり、『ミヤネ屋』に対抗しろと指示している。『ここで勝てないとフジは勝てない』とまで言われています。視聴率を上げて、その後のゴールデン番組にも弾みをつけたいと考えているのです」

初回放送は、連ドラで医師役を演じる斎藤工がわざわざ白衣姿で登場した。すると安藤は、

「私27年間ニュースをやってきて、それが終わった途端、39度の熱が出たんです。今日も本調子じゃないの。診てほしい!」

と、相変わらずの報道愛をチラつかせつつも、セクシー俳優にノリノリで絡んだ。が、トップニュースは「三菱電機の液晶テレビが突然真っ暗になるトラブル」と地味な上、芸能ニュースを解説する週刊女性編集部の荒木田範文氏の肩書をテロップで「週刊文春」と間違えて訂正するというバタバタの展開だった。

その分、首位にある「ミヤネ屋」はそつのなさが際だった。司会の宮根誠司はいつもどおりの笑みを浮かべ、「他局も変わりましたから」とあえて触れた。リニューアルしたスタジオセットは「大塚家具です。全部」と時事ネタでボケる余裕を見せつけ、結果は視聴率に顕著に表れた。

「グッディ!」は第1部3.6%、第2部2.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)だったのに対し、「ミヤネ屋」は7%台。ダブルスコアでフジが惨敗した。

上智大の碓井広義教授(メディア論)が分析する。

「安藤さんは今までの夕方のニュースと変わらない印象。彼女は顔に出るタイプで、やわらかいネタでの反応の鈍さが視聴者にはわかりやすかった。常に『私が』と前に出ていこうとする安藤さんに対し、高橋さんはまだ自分をどう位置づけるかがつかみきれず、制作側もそこが見えておらず、視聴者もどう見ていいのかわからなかった」


前出のフジ社員も言う。

「安藤さんが自分の言いたいことを半分に抑え、『オバちゃんキャラ』になりきれたらという意見も出ています。ただ、スパルタな安藤さんと、テンパった自分を隠さない高橋さんのコンビが夫婦漫才のようなやりとりでハマってくると数字は上がるのではないか」

(週刊朝日 2015年4月24日号より)