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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

書評本: あらえびす『クラシック名盤 楽聖物語』ほか

2015年04月06日 | 書評した本たち



私たちの世代にとって、銭形平次といえば、大川橋蔵さん。

ただし“女房のお静”は、八千草薫さんより香山美子さんのほうが馴染みがあります。

そういえば、昨年、原作である野村胡堂「銭形平次捕物控傑作選」が、文春文庫からシリーズで出ました。

高齢化社会の中で、あらためて需要があるのかもしれません。

作家・野村胡堂=音楽評論家・あらえびす。

クラシック音楽評論では、同じ作家で、「柳生武芸帳」の五味康祐さんも、よく知られていました。

時代小説とクラシック。

面白い作家たちですね。




以下、週刊新潮に書いた書評です。

あらえびす『クラシック名盤 楽聖物語』
河出書房新社 3024円


”銭形平次”の作家・野村胡堂が別名で書き続けた音楽評論、半世紀ぶりの再刊だ。ヘンデルからドビュッシーまで17人の大音楽家の伝記と、107人の作曲家の別伝が並ぶ。レコード評論のパイオニアが選んだ名盤と評価は、時を経ても凛として揺らぐことはない。


高田文夫『誰も書けなかった「笑芸論」』
講談社 1350円


演芸好きの少年が長じて人気放送作家となった。森繁久彌、三木のり平、青島幸男からビートたけしまでを、ここまで体感的に語れるのは著者しかいない。特に、盟友・戦友ともいうべきビートたけしが世に出るまでのエピソードは秀逸。「世界の北野」の原点だ。


村松友視『金沢の不思議』
中央公論新社 1890円


北陸新幹線の開業でスポットを浴びる金沢。氾濫するガイド本とは一線を画すのが本書だ。登場するのは長唄・囃子の名手、加賀竿・毛針の達人、宝生流能楽師など。中でも茶屋町に流れる闇笛の逸話は絶品。このまちに通いつめた者ならでは距離感と視点が見事だ。

(週刊新潮 2015.04.02号)


ウォシャウスキー姉弟が拓く映像最前線、映画『ジュピター』

2015年04月06日 | 映画・ビデオ・映像



『マトリックス』のラナ&アンディ・ウォシャウスキー監督最新作、『ジュピター』を観てきました。

遺伝子操作された元兵士のケイン(チャニング・テイタム)は、ある女性を守るという任務のために宇宙から地球に派遣される。シカゴで清掃員として働くジュピター(ミラ・クニス)は、殺伐とした大都会での暮らしに嫌気が差していた。だが、実は彼女こそが、地球のみならず宇宙を変化させる可能性のある遺伝子を備えた唯一の人物だった。主演は『ホワイトハウス・ダウン』などのチャニング・テイタムと『ブラック・スワン』などのミラ・クニス。


うーん、我々地球人というか、人類って、そういうことだったの? と納得するもよし。バカ言ってんじゃないよ、と苦笑いするもよし。

オリジナルストーリーだそうですが、思い切った大ボラというか、壮大なスペースオペラでありました。

これだけのヨタ話(ホメてます)を、めいっぱい映像にしてしまうのがウォシャウスキー作品の魅力。

とにかく、「今の映像最前線はここだぜ!」と宣言しているかのような、“怒涛の寄り”的ビジュアルです。

まあ、それを体感するだけでも、入場料金の価値は十分あると思います。