碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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BPO「クロ現」意見書を高く評価します

2015年11月08日 | メディアでのコメント・論評



BPOが、「クロ現」問題に関する意見書を公表しました。

その直後に、通信社から取材を受け、以下のように答えました。

コメントとして整理された上で、各地の地方紙などに配信される予定です。


まず最初に、委員会の真摯かつ的確な検証に敬意を表し、意見書の内容を高く評価します。

意見書全体から、誤った意識と方法による報道に対する強い憤りと、今回の問題が今後、放送の自律や表現の自由に影響を及ぼすとことへの懸念が伝わってきました。

意見を向けた相手は3者でした。

当事者である記者に対して、重大な放送倫理違反があったと指摘。報道番組で許容される範囲を大きく逸脱した取材方法や表現を用いたことを強く批判しています。

次にNHKに対して、内部における「やらせ」の概念には、視聴者が持つ一般的な感覚と距離があることを指摘。報道番組における、事実の「わい曲」を問題視しています。また、セクショナリズムの弊害など、組織的な問題点にも言及しています。

さらに、政権与党に対して、個々の番組に介入すべきでないこと、またメディアの自律を侵害すべきではないと強調。今回の問題をきっかけに、政権によるメディア・コントロールがさらに強まることを警戒し、けん制していますが、BPOの矜持を感じます。放送に携わる人間は全員が読むべき意見書だと思います。



ぜひ、この意見書全体を読んでみてください。

NHK総合テレビ「クローズアップ現代」
“出家詐欺”報道に関する意見

http://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2015/23/dec/0.pdf

書評した本: 入江敦彦 『ベストセラーなんかこわくない』ほか

2015年11月08日 | メディアでのコメント・論評



「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。

入江敦彦 『ベストセラーなんかこわくない』
本の雑誌社 1944円

ベストセラーは時代の空気と触れあって熱を帯びる。だから、「冷ましてから読むべし」と著者。名言だ。並ぶのは『恍惚の人』『日本沈没』『窓ぎわのトットちゃん』など46冊。その内容の吟味から、売れた理由までが開陳される。本で辿る現代世相史でもある。


小田嶋 隆 『超・反知性主義入門』
日経BP社 1620円

日経ビジネスオンラインに連載中のコラム「ア・ピース・オブ・警句」の単行本化も本書で第5弾。安倍政権が生み出す嫌な空気を指摘し、「愛国者のふりをしないと孤立する社会」への警戒を強めている。巻末の森本あんり・ICU副学長との対談もお得感あり。


垣谷美雨 『老後の資金がありません』
中央公論新社 1728円

気になるタイトルの書き下ろし長編小説だ。篤子はごくフツーの主婦。老後のための貯金もしてきた。ところが、娘の派手な結婚式に大金を投じる破目になる。しかも自分はパートの契約を打ち切られ、夫までリストラの憂き目だ。さあ、この苦境をどう脱するのか。

(週刊新潮 2015.11.05号)

【気まぐれ写真館】 ふるさとでの講演会

2015年11月08日 | 気まぐれ写真館