碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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24時間パロディも  Eテレ「バリバラ」が伝えた障害者の本音

2017年09月08日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載中のコラム「TV見るべきものは!」。

今週は、Eテレ「バリバラ」について書きました。


Eテレ「バリバラ」
「VSじゃなく、withですから」

今年も「24時間テレビ・愛は地球を救う」(日本テレビ系)が放送された。例によって義足の少女が槍ケ岳に登ったり、耳の不自由な子供たちがマリンバの合奏をしたり。さらにブルゾンちえみの「感動のゴール」もあって、番組終了時の募金総額は約1億2902万円。いや、大したものだ。

巨大特番がフィナーレに向かう中、Eテレではレギュラー番組の「バリバラ」が生放送されていた。出演者たちは、胸に「笑いは地球を救う」の文字が躍る黄色いTシャツ姿だ。司会の山本シュウが笑いながらクギを刺す。「(24時間テレビとは)VSじゃなく、withですから」。

VTRも傑作だった。「障害者の夢を実現し感動を分かち合う」という「24時間」風の企画だ。たとえば「山に登りたい」と語る脳性マヒの男性が、山の麓まで連れて行かれ、「さあ、どうぞ」と促される。身動きできない男性は、「頂上から景色を見たかっただけなのに~」と嘆き、「障害者が頑張ってるのを見て面白いですかあ?」と問いかけていた。

スタジオでは、「本人に、したいこと、したくないことを聞こうよ」といった障害者たちの本音が続出。「やってあげる」ではなく、「一緒に」が大事なのだとわかった。まさに「バリバラ」の精神だ。来年もぜひ、熱い“裏番組”を。もちろんVSじゃなく、withで!

(日刊ゲンダイ 2017年9月6日)