
「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
佐々木 譲 『真夏の雷管』
角川春樹事務所 1728円
北海道警察シリーズの最新作だ。ホームセンターで発生した窃盗事件を追う、大通り署刑事三課の佐伯宏一。狸小路の店で工具を万引きした少年を探す、生活安全課の小島百合。別々だった出来事が同心円を描き始めた時、真夏の札幌を揺るがす爆破事件が見えてくる。
三島由紀夫
『告白 三島由紀夫 未公開インタビュー』
講談社 1620円
三島由紀夫の自決は昭和45年11月25日。その約9か月前に行われたインタビューが発見された。録音テープの中の三島が、文章に余白がないことを自らの欠点とするなど、快活かつ率直に文学と人生を語っていて驚かされる。何度も話題になる『太陽と鉄』も併録だ。
梅原猛、川勝平太 『日本思想の古層』
藤原書店 1944円
西洋哲学、東洋思想、さらに日本文化研究と孤高の歩みを続けてきた梅原。経済史研究家で静岡県知事の川勝。対談形式で梅原の軌跡をたどりながら、この国の基礎理念だという天台本覚思想「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」の意義を探る。梅原哲学の到達点を知る一冊だ。
澤田隆治
『私説 大阪テレビコメディ史
~花登筐と芦屋雁之助』
筑摩書房 2376円
著者は『てなもんや三度笠』『ズームイン!! 朝』『花王名人劇場』などを手がけてきた伝説のテレビ制作者。昭和30~40年代の大阪のテレビ界が、作家・花登筺と役者・芦屋雁之助という異能の2人を通じて描かれる。一個人の回想に留まらない、貴重な放送文化史だ。
(週刊新潮 2017.09.28号)