碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「コンフィデンスマンJP」は、フジ「月9」の新たな挑戦か!?

2018年05月29日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評


フジ「月9」の新たな挑戦

フジテレビの月曜夜9時枠は「月9」と呼ばれる。人気のピークは「東京ラブストーリー」などの恋愛ドラマを量産した90年代だが、その後も恋愛ドラマの代名詞ともいうべきブランド枠として維持されてきた。しかし支持層の中心だった若者の恋愛観の変化や、フジテレビという局そのものに対する逆風もあり、近年は低迷が続いていた。

今期の月9は「コンフィデンスマンJP」。恋愛ドラマではない。コンフィデンスマン、もしくはコンマンとは詐欺師やペテン師の意味で、相手を信用させて詐欺を働くのがコンゲームだ。

有名な「コンゲーム映画」としてはポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの「スティング」(73年)がある。最近ならジョージ・クルーニー主演「オーシャンズ11」シリーズだろうか。このドラマはまさに「コンゲームドラマ」だ。

チームの主要メンバーはボスのダー子(長澤)、人の良さそうな青年詐欺師ボクちゃん(東出昌大)、そして変装名人リチャード(小日向文世)の3人。これまでにターゲットとなったのは裏の顔を持つ公益財団会長(江口洋介)、ホテルチェーンの強欲な経営者(吉瀬美智子)、美術品の真贋を偽って儲ける美術評論家(石黒賢)などだ。

第5話「スーパードクター編」では、山場の手術場面で「ボストンの名医」に化けたダー子が実際に患者の体にメスを入れるのを見て、ボクちゃんが驚愕した。そして多くの視聴者も。つまり相手や仲間だけでなく、視聴者もだまされてしまうのがコンゲームドラマの快感なのだ。

しかしドラマスペシャルのような「単発」ならともかく、「連ドラ」となると制作側は大変だ。なぜなら毎週だと視聴者も徐々に慣れてきて、「今回も我々をだまそうとしてるんでしょ?」と身構えてしまうからだ。

脚本はドラマ「リーガル・ハイ」(フジテレビ系)などを手掛けてきた古沢良太のオリジナル。ハリウッド並みのスケールは無理でも、3人のキャラクターを生かした「だまし技」の連打が腕の見せどころだ。「視聴者に何を、どこまで、どのタイミングで知らせるか」が緻密に計算された、毎週楽しめるコンゲームドラマになっている。

(しんぶん赤旗 2018.05.28)