碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

紀伊民報のコラムで、『ドラマへの遺言』が引用されました

2019年04月22日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

「平成の終わり」

平成という時代をどう締めくくるか。元号は天皇制に結び付くから、天皇、皇后両陛下の活動が回顧の中心になる▼例えば、脚本、演出家の倉本聰氏は最近の著書『ドラマへの遺言』(新潮新書)でこんな話を紹介している。両陛下が氏の自宅を訪問された時、膝をついてご自分の靴をそろえ、向きを変えられた。出ていかれる時にも土間に膝をつき、スリッパの向きを変えられた、と▼以前、韓国の女性記者が日本のこの風習を理解できず、招かれた家の主婦に自分の靴を外向きにされたことを帰国後、著書に「私に早く出て行けという意思表示で、非歓迎の印だ」と書いたことがある▼そこまで言うのは極端としても、日本でもいまはこんな美風はかなり廃れているだろう。私自身、客を招いても自分が客になっても、こんな心配りを実行したことがない▼災害が非常に多かったのが平成時代の特徴だった。そのたびに両陛下は災害地を訪問されたが、現場ではいつも地べたに正座され、被災者に向き合われたことは、新聞報道などでよく知られている。「同じ高さの視線で接する」ことを基本とされていたのだ▼倉本氏は、ゲストの両陛下がこんな作法、心遣いを当たり前のように示されたことに「そこまでされるのか」と衝撃を受けたという。だが、そこは名代の脚本家。「そうだ、天皇家は日本の作法の家元なんだ」と、無理やり自分を納得させたと書いている。(倫)

 (紀伊民報 2019年04月11日)

 

 

ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社

 


市民タイムスに、トーク&サイン会の記事

2019年04月22日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

塩尻市出身で元テレビプロデューサーの上智大学教授・碓井広義さん(64)の著書刊行を記念したトーク&サイン会が20日、同市広丘高出の中島書店で開かれた。近著『ドラマへの遺言』の共著者である脚本家・倉本聰さんとのエピソードを中心に、番組制作の裏話などを語った。

「脚本家・倉本聰のドラマ世界」と題し、碓井さんと旧知の間柄である東座代表・合木こずえさんが聞き手を務めた。碓井さんはテレビ界に入ったきっかけや倉本さんとの出会い、倉本さんの脚本作りにかける思いなどについて語った。

執筆前の取材を綿密に行う倉本さんの姿勢や、自身の経験を踏まえた現実的な内容の脚本であることなどが紹介された。碓井さんは「倉本ドラマの醍醐味は人間ドラマ。せりふ一つに込められたものが多いので、細かいところまで見て味わってもらいたい」と呼び掛けた。

上智大学文学部新聞学科でのテレビ制作の授業についても触れた。「若い人は新聞も読まずテレビも見ない人が多い。スマートフォンで見られるインターネットのトピックス以外が彼らにとって『起こっていないこと』になってしまうのが怖い」と若者のマスコミ離れを懸念し、警鐘を鳴らしていた。

会場には50人余りが詰め掛け、立ち見が出るほどの盛況ぶりで、講演後のサイン会にも多くの人が列をつくっていた。

(市民タイムス 2019.04.21)

 

 

ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社